【HJMG!不毛さん1】
1.不毛な新生活~うちに桃太郎が住み着きだした件1
「アッ、スイマセン」
反射的にドアを閉めた。部屋の中におかしな格好をした男性が1人、ちょこんと座っていたからだ。
「アカンやん、アタシ」
1人でツッこむ。今日引っ越してきたばかりにしても、自分の部屋を間違えるなんてヒドイ。
あらためて玄関脇を見上げる。
『多部(たべ)リカ』
真新しい表札にはそう書かれていた。
「アタシの名前やん。じゃあ何なん、あの人……幻?」
一瞬、思考が停止する。
その時だ。すぐそばから「ヒャッ」と悲鳴。隣りの部屋の人だ。アタシよりちょっと年上の女の子が玄関扉を細く開けてこっちを覗いている。目が合うと「こ、ここ……こんにちは」と言ってそそくさと部屋に入っていった。アタシが1人でブツブツ言ってたものだから、不審に思ったに違いない。
後でちゃんと挨拶に行こ。そう考えながら、アタシは(多分)自分の部屋の扉を開ける。
「ちょっと! 何なん、アンタ! 他人の部屋にッ」
机の前に正座していた小男がクルリとこっちを振り向いた。
「な、何……ッ?」
男はスーツを着ていた。ピンクのネクタイを締めている。家の中なのに、何だかワラジを履いていた。分厚い丸メガネをかけて、額には『日本一』と筆書きされたハチマキを巻いている。前髪は眉毛の上できれいにパッツン切りそろえられ、後ろ髪は頭のてっぺんでチョンマゲにしてる。
「そちは何者じゃ。名を名乗れぃ」
そいつはアタシに向かって人差し指を突きつけ、変に高い声で叫んだ。
「ア、アタシは多部リカや。こ、ここの部屋の住人や……」何でアタシが狼狽せんといかんねん。「アンタこそ誰や!」
思いっきり叫ぶと、奴は涼しい顔してこう言った。
「余は桃太郎じゃ」
アカン! キタ! 困った人、やってキタ!
「余…ヨって……アンタ、どこの殿様やねん! い、いや、あの……部屋、間違えてますよ?」
関西人のサガで反射的にツッこみかけたところをグッと堪えた。アカン。こういう人に対しては、あまり刺激しないように穏やかに喋らないと。
桃太郎──と名乗ったメガネはゆっくりと肩を竦めた。チラリと横目でアタシを見やる。
「日本の人口は約1億3,000万人。約5,000万世帯もあって、狭い国土に隙間なくウサギ小屋が建ち並んでおる。その中の一つに、余が紛れ込んでもバレはすまいと思っての」
「そりゃバレるわー!」
アタシは声を大にして叫んだものだ。
【つづく】
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