28.リカ、ダウン!~その病の名こそ、不毛ワールド?3

【HJMG!不毛さん84】
28.リカ、ダウン!~その病の名こそ、不毛ワールド?3
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「熱が40度近くもあるぞよ。医者に参ろう」

「アカン。ゴホゴホッ! ア、アタシ、健康保険証持ってきてないねん。大阪のおかんのタンスの引き出しに入ったままや。ゴホッ! お金もないし、病院行かれへんわ……」

「そ、そのようなことを申している場合ではないぞ」

 熱に加えて咳と鼻水。頭も痛いし、関節──特に抜けた肩が──ジワジワ痛む。喋るたびに炎症した喉が引き攣った。

「アタシ、病気なんてしたことなかったのに……。何せ目の前で壮絶な出家シーン目撃したからショックで……だから……」

「もう喋るな。ほれ、水を飲め」

「あ、ありがとう、ももたゴブッ! 伝染ったらアカンからマスクして。ホンマはアタシがしたらいいんやけど、鼻水ドロドロでマスクの中に鼻水たまるねん。気持ち悪いからアカンわ」

「余のことは良い。自分の身体をいとえ」

「も、ももた……ウッ!」

 お姉にもワンちゃんにも見捨てられたアタシを、信じられないことに桃太郎が献身的に看病してくれた。

「ほれ、粥ができたぞ」

 やたら真っ茶々なお粥を作ってくれたり、生ぬるいアイスノンをおでこに乗せてくれたり。

 こういう時に人間の真価っていうのが分かるんやな。桃太郎……優しいし? 思いやりあるし? 意外と頼もしいし?──全てにおいて疑問符が付くのは否めないが。でも無理矢理追い出そうとしていたことが、今更ながら申し訳なく思えてきた。

「ホ、ホンマに感謝してるねん。ゴホゴホ。ありがとうな、桃太郎。この家にずっといて……ゴフッ! ゴッ、ガッ! グヘッ!」

「この家にずっと……何じゃ? はっきりと申してみよ」

 恐ろしいセリフを口走りそうになり、咄嗟にフトンを噛んだ。

「アカンて! アタシ、アカンってば!」

 アタシは今、病気で心が弱ってるだけや。ここにいてもいいよ、なんて口走ってみ?

 一生この変人に付き纏われるかもしれん。

「そんなん、ゴメンや!」

 アタシが激しく首を振ると、桃太郎は向こうに顔を向けて「チッ」と舌打ちした。危ない、危ない……。

 その後は看病に飽きたかのように部屋の隅に行ってしまった。昨日買ってきた文庫本の本屋のカバー背にタイトルを書いている。『今からでも間に合う株式入門──絶対損をしないために』──桃太郎、アンタは一体、何を目指してるの? どこへ向かおうとしてんの?

つづく

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良かったらマンガもみてね。こっちもアホだよ。
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