28.リカ、ダウン!~その病の名こそ、不毛ワールド?3
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「熱が40度近くもあるぞよ。医者に参ろう」
「アカン。ゴホゴホッ! ア、アタシ、健康保険証持ってきてないねん。大阪のおかんのタンスの引き出しに入ったままや。ゴホッ! お金もないし、病院行かれへんわ……」
「そ、そのようなことを申している場合ではないぞ」
熱に加えて咳と鼻水。頭も痛いし、関節──特に抜けた肩が──ジワジワ痛む。喋るたびに炎症した喉が引き攣った。
「アタシ、病気なんてしたことなかったのに……。何せ目の前で壮絶な出家シーン目撃したからショックで……だから……」
「もう喋るな。ほれ、水を飲め」
「あ、ありがとう、ももたゴブッ! 伝染ったらアカンからマスクして。ホンマはアタシがしたらいいんやけど、鼻水ドロドロでマスクの中に鼻水たまるねん。気持ち悪いからアカンわ」
「余のことは良い。自分の身体をいとえ」
「も、ももた……ウッ!」
お姉にもワンちゃんにも見捨てられたアタシを、信じられないことに桃太郎が献身的に看病してくれた。
「ほれ、粥ができたぞ」
やたら真っ茶々なお粥を作ってくれたり、生ぬるいアイスノンをおでこに乗せてくれたり。
こういう時に人間の真価っていうのが分かるんやな。桃太郎……優しいし? 思いやりあるし? 意外と頼もしいし?──全てにおいて疑問符が付くのは否めないが。でも無理矢理追い出そうとしていたことが、今更ながら申し訳なく思えてきた。
「ホ、ホンマに感謝してるねん。ゴホゴホ。ありがとうな、桃太郎。この家にずっといて……ゴフッ! ゴッ、ガッ! グヘッ!」
「この家にずっと……何じゃ? はっきりと申してみよ」
恐ろしいセリフを口走りそうになり、咄嗟にフトンを噛んだ。
「アカンて! アタシ、アカンってば!」
アタシは今、病気で心が弱ってるだけや。ここにいてもいいよ、なんて口走ってみ?
一生この変人に付き纏われるかもしれん。
「そんなん、ゴメンや!」
アタシが激しく首を振ると、桃太郎は向こうに顔を向けて「チッ」と舌打ちした。危ない、危ない……。
その後は看病に飽きたかのように部屋の隅に行ってしまった。昨日買ってきた文庫本の本屋のカバー背にタイトルを書いている。『今からでも間に合う株式入門──絶対損をしないために』──桃太郎、アンタは一体、何を目指してるの? どこへ向かおうとしてんの?
【つづく】
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