2.不毛姉妹~妹が高圧電流を全身に浴びた話2
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ようやくアタシは解放された。警察にご迷惑をかけたのは生まれて初めてだし、色々問い質された…というか、怒られたというか…馬鹿にされたわけだけど。とにかくショックやった。生きた心地もしなかった。過去に補導歴がないかどうかということまで調べられたし。
電車に乗ってバスに30分乗って、更にテクテク歩いてアタシら姉妹はアパートに帰ってきた。その間、首筋に洗濯ばさみ挟んだまま。お姉のにこやかな笑顔と冷たい視線にさらされて、アタシは生きた心地がしなかった。どうでもいいけどこの人、まだ1回も妹(アタシ)に向かって話しかけてへんで。
オールド・ストーリーJ館(AからI館までは聞いたことがない)。大層な名前だけど、それは東京とは思えない荒地の真ん中にポツンと建つ木造2階建てのボロアパートだ。
ここの2階の1室がアタシの新居。姉はここの大家なのだ。
「せ、洗濯ばさみ、そろそろ外してもいいですかね?」
すごい下手に出て聞いたのに、あえなく無視された。姉はアパートを見ている。その視線を辿って、アタシは玄関前で手を振っている若い男の姿に気付いた。
「乙姫サマ! お勤め、ご苦労様です!」
お姉に向かって敬礼した。何や、それ。うちの姉は一体どこの組長やねん。
お姉は当たり前みたいに鞄をそいつに預け、脱いだ靴をわざと遠くに転がした。
「ハァハァ」言いながら男はよつんばいになって靴を拾いに行く。
「な、何や、この人……」
明かに関わりたくないタイプの人間だと、アタシは本能で気付いていた。
プチを付けても可愛くないわよ、とにっこり笑って言われた。
「オホホ」
何が楽しいのか、笑いながら姉がアタシの洗濯ばさみを引きちぎる。
「ギャッ!」
皮膚ごともっていかれそうな激痛に、その場にうずくまった。その声でようやくアタシの存在に気付いたのだろう。男が立ち上がる。まだ20台前半──お姉と同年代くらいに見える。体格はいいくせに、何やら貧相な印象を与える男だ。そいつはしたり顔でアタシの前に人差し指を突き出した。
「電線でターザンごっこはダメっ!」
だから何なんや、コイツは。アタシは口元が引きつるのを自覚した。
「この人、シバいてもいい?」
お姉は肯定も否定もせずに「この男、わたしの夫よ」とサラリと告げた。
「は、初耳やで! お姉、いつ結婚したん?」
「オホホ。昨日よ」
「昨日ってアタシが引っ越してきた日やん。どうりで手伝いにも来てくれへんと思ったわ。そんな重大イベントしてたんや。え? それ、お父とお母は知ってんの?」
「ええ、今朝電話で言ったわ」
「電話なんや……」
うちの家族、別に仲が悪いわけじゃない。おめでたいことなんやし、ちゃんとしたプロセス踏んだらいいのに。
「お父さんとお母さん、酷く落ち込んでいてそれどころじゃなかったみたいよ」
「ああ……ソレ、アタシのせいや。ごめんな」
「そうね。あなたが突然こっちに引っ越したいけど部屋は空いているかなんて電話してくるから、わたしも驚いたけれど」
「はい。お父とお母には言ってません。つまりプチ家出っていうか……」
【つづく】
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