不毛姉妹~妹が高圧電流を全身に浴びた話3

【HJMG!不毛さん5】
2.不毛姉妹~妹が高圧電流を全身に浴びた話3
      【はじめましての方はこちらへどうぞ】
      【前回のお話はコチラ


「何があったかは大体聞いたわ。お父さんとお母さんには、定期的にわたしから連絡を入れる事になったから。家出なんて感心しないけど、人生にはそんな時期もあるわ。しばらくここで休んでいきなさい」

「お、お姉……」

 しばらく会わん間にずいぶん人間ができてきたなぁ! 何て物分りのいい……だ、大好きや、お姉ッ!
 アタシが涙で目を潤ませたその時だ。疎ましいことに姉の夫が突然視界を占領した。何かハァハァ言ってる。

「僕はうらしま太郎だよ。年は22歳。趣味は釣り。休日はもっぱら……あふんっ!」

 うらしまは突然ヘンな悲鳴をあげた。どうやらお姉の洗濯ばさみの餌食になったらしい。うらしま、喘ぎ声を漏らしながらそのまま表へ走り出る。うちの姉、誰に対しても容赦ないからな。

 アタシはそんなことはどうでも良くて、昨日の不審者へと考えをシフトする。桃太郎、うらしま太郎……昨日から太郎さんばっかり登場や。いや、昨日の奴は正直、現実とは思えへんけどな。そのことをお姉に言うと、彼女は嫌な笑い方をした。

「あら、その部屋には幽霊は出ない筈よ。1─3には相当酷いのが住んでいるらしいけど。そういや2─1の前の住人は小人が出たって言って引っ越していったわね」

「やめてぇな。アタシ、そういう話苦手やねん」

「幽霊でも小人でも構わないわ。家賃さえ払ってくれれば」

 お姉はオホホと笑った。冗談抜きで言ってるから嫌やわ、この人。

「幽霊ちゃうなら、桃太郎はやっぱり宇宙人。さもなきゃアタシが見た幻……?」

「宇宙人?」

 お姉はキョトンとしている。

「昔お姉が言ったんやん。地球人の2分の1は既に宇宙人なんやって。混じって暮らしてるねんって」

「そうだったかしら、オホホホ」

「オホホちゃうわ!」叫んだ拍子に腰がビクッと震え、膝がカックリ折れた。「アカン、2千アンペアの後遺症が……」

 そこへうらしま、新聞をいっぱい抱えて帰ってきた。

「乙姫サマ、夕刊にもう出てますよ」

 何だか嫌な予感がした。全身に残る電流に足を取られながらも、アタシはヨロヨロと立ち上がる。

「声に出して読んで御覧なさい。うらしま」

「はい、乙姫さま! 16歳少女奇行! 電柱に登り感電。雷に撃たれ高圧電流を浴びるも、奇跡の生還。本人談『目が醒めました』とあります」

 呆然とするアタシに新聞を持たせて、うらしまはパシャパシャ写真を撮りまくる。お姉はそれをお父とお母に送ると言う。やめてぇーとアタシはその新聞で顔を隠した。

「目が醒めましたって……何や、そのコメント。アタシそんなん言ってへんで。アホ丸出しやん。実際そんなん言ってる余裕ないで……って、やめてぇな! やめてぇ!」

 フラッシュの瞬きの中を、アタシの叫びが空しく響き渡った。


    このエントリーをはてなブックマークに追加 

  「HJMG!不毛さん」とは…こんなお話はコチラ

   HJMG!不毛さん サイトマップはコチラ


   HJMG!不毛さん第1話はコチラ 


良かったらマンガもみてね。こっちもアホだよ。
          ↓ ↓ ↓
【はじめましての方はこちらへどうぞ】