28.リカ、ダウン!~その病の名こそ、不毛ワールド?1
【はじめましての方はこちらへどうぞ】
「何やら芳しい香りが……」
そう思って玄関を開ける。すると足元に一輪の花が。廊下にちょこんと置いてある。『おみまい』と特徴ある字でメモが付いてた。
「この字、じいさんや!」アタシの肩と足の負傷を知って、それでこの花を……。
「うっ……」
涙が滲んだ。このアパートに来て初めて。こういう小さな優しさ。
アタシはいてもたってもいられなくなって、2─4へと駆け出した。扉をドンドン叩く。
「じいさん、じいさん、出てきてぇな! お花、ありがとうな」
中で身じろぎする気配がし、続いてドア越しに例のボソボソ声。
「かたとこしのぐあいは?」
「肩と腰? アタシの負傷箇所は肩と足やけど。なぁ、じいさん、出ておいで。そんな所にこもってたらアカン。アンタはホンマはいい子や。キレイなお花育てるなんて、素敵な心持ってる証拠やん」
あれから花阪Gはこの部屋から出てこない。奴がますますヒッキーになったのは、アタシにも責任の一端があるわけやし? とにかくアタシも必死だった。
「な! 出てきたらケーキあげるで」
「いーやーだー」
「チョコレートは?」
「いーやーだー」中から抑揚のない恨みがましい声。「かみのけはえるまでじぃはでていかない。すいようびのスロットてんごくのひいがい、じぃはそとにでない」
──髪の毛生えるまでGは出て行かない。水曜日のスロット天国の日以外、Gは外に出ない。
「は? スロット天国の日?」
それはどうやら、行き付けのパチンコ屋のスロットの設定激ユルの日らしい。
「パチンコではかせげないと、さいきんようやくわかった。スロットしかない。じぃにはもうスロットしかない。スロットしか……」
きっと真っ暗な部屋でカーテンの隙間から差し込む日光に頭だけピカピカ光らせて、畳見ながら喋ってるんやろな。暗いんだか、おかしいんだか。引くけど、笑える姿でいるんやろな。
「かみのけがはえるまで、じぃはぜったいでていかない」
決意は固いようだった。
【つづく】
「HJMG!不毛さん」とは…こんなお話はコチラ
HJMG!不毛さん サイトマップはコチラ
HJMG!不毛さん第1話はコチラ
良かったらマンガもみてね。こっちもアホだよ。
HJMG!不毛さん サイトマップはコチラ
HJMG!不毛さん第1話はコチラ
良かったらマンガもみてね。こっちもアホだよ。
↓ ↓ ↓
【はじめましての方はこちらへどうぞ】