【HJMG!不毛さん57】
19.不毛大作戦!2~テロだか何だか、かなりヒドイかんじ2【はじめましての方はこちらへどうぞ】
どんよりした気分のまま、アタシたちは1―4号室前までやってきた。
中で人の気配がする。
さっきまで廊下にうずくまっていたオキナも、さすがに室内に戻ったのだろう。
そもそもお姉がかぐやちゃんとのデートを焦るのは、オキナに対抗してのことらしい。
悲しいし、何か間違っている。
まさしく不毛な恋愛バトルや。
「邪魔すんで、オキナ」
ドアが開いていたので中に入る。
ピューっと心地良い風がアタシの顔を撫でた。
「涼しいなぁ。あ、この部屋角部屋だから窓2つあるんや。いいなぁ」
「あ、リカちゃん? いらっしゃーい」
「アタシの部屋は2-1やけど、壁の向こうに倉庫と階段があるから建物の端っことは違うねん。窓も1こや。やっぱり明るさも違(ちゃ)うな」
「あー、そうなんだー?」
言いながらアタシの前をウロウロする赤毛男。
激しい落込みからは一応脱したように見える。
「──ちょっと待ってや」
「何か?」
オキナは水色パンツ(ブリーフの方)一丁だったのだ。
「オキナ……アンタ、決してパンツをはかないという主義を捨てたんか?」
いや、あんなことがあったんや。
無理もない。
でも、だからって見せ付けるように水色ブリーフってのは……。
「ヤだなぁ、コレは見せパンだよ」
シレッとした顔で言いやがる。
「いや、見せパンってのはチラッと見える的な……なぁ?
何て言っていいか分からず、アタシは隣りのうらしまの腕をつついた。
「そうだ。君は微妙なチラリズムの極意を分かってない!」
「………………」
あぁ、アホが語りだした。
アタシにフォローはできんわ。
オキナはパンツ一丁でせっせと鼻をかんでいる。
すごく矛盾した行動だと、アタシは思った。
「それにしてもアンタ、16歳のうら若い乙女の前でよくそんな格好できんな」
精一杯の皮肉を込めてそう言うと、奴はチラッとアタシを見て「ハハッ」と低い笑い声をあげた。
ムカツク奴だ。
水色パンツを恥ずかしがるでもなく、更に左右に引っ張って「スズシイ~」と風を送り込んでいる。
「で、何の用なの? 珍しい組み合わせだけど」
アタシとうらしまを交互に見比べている。
「いや、あの……まぁな」
裏庭へ行く通路が電化製品に埋まっていて通りにくい上に、正面からあの人に会いに行くのも恐ろしい気がしてな。
「?」
ちょっとゴメンな、とアタシは裏庭に面した窓辺へ寄った。
目の前が竹やぶ。
涼しげでいい感じや──うず高く積みあがる電化製品の山がなければ、の話だが。
それらの向こうにかぐやちゃんの住処が見える。
「何であの人、こんなに家電ゴミ集めてんのやろ」
お姉の部屋も大概汚いけど、レベルが違う。
いや、質が違う。
「まぁいいわ。うらしま、例の」
目で合図をする。
「ハイッ!」
うらしまは窓辺に走ってきた。
コイツ、慣れれば忠実や。
「ハイッ!」
持っていた小袋を開けて、中身を窓から竹林に放り投げる。
豆だ。あと、かぼちゃの種。
瞬間──カサカサと、異様な格好で小屋から這い出てきたかぐやちゃん。
キョロキョロ周囲を見回してから豆と種拾って、急いで口に入れている。
こんな人のどこがいいんやろ、うちの姉は。
「かぐやちゃん、アタシに付いて来てくれたら豆と種、もっとあげます!」
言うと彼はハッとしたように顔を上げた。
ヨダレが……。
こうしてアタシらは、かぐやちゃんを連れ出すことに成功した。
【つづく】
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