不毛なまでの怯え方~初めて会った義兄はヘンタイでした3

【HJMG!不毛さん10】
.不毛なまでの怯え方~初めて会った義兄はヘンタイでした3
      【はじめましての方はこちらへどうぞ】
      【前回のお話はコチラ


「昼ごはんのタシにしようと、釣りをしてもダメ。コオロギも獲れない。イナゴもダメ……」

「釣りがダメって……アンタ、完全に名前負けしてんな」

「やー、照れるなー。いっそオオクワガタでも探してみようか」

「褒めてへんわ! オオクワガタなんて見付からへんわ。ここはトーキョーやで?」       

 かなりアホっぽい貧乏な義兄は釣りをしても失敗。目当ての食料(?)も獲れず、こうなったら部屋を漁るしかないという考えに行き着いたのだろう。でも1人でやるのは怖い、と。

「現金を勝手に取るのはマズイ。金目のモノ、プレミアもの、或いは売れそうな何か。なくなっても乙姫サマが気付かなさそうな何か。一緒に探してくれ!」

 もう一度、うらしまは土下座した。コイツ、土下座が似合いすぎる。最初はびっくりしたけど、今回はアタシも這いつくばる奴を余裕で見下ろしていた。

「いやや! 1人でしろや! アタシは共犯にはなりたくないわ。お姉はアンタが思ってる以上に恐ろしい人やで。羊の皮被った悪魔や! 住家は魔界や! 赤い血なんて1滴も流れてへん! アタシは幼い頃から、どれだけあの人に怯えてきたか……」

 じんわりと涙が溢れてきた。

「肩、外れたのも乙姫サマの仕業……?」

 うらしまの目つきが嫌だ。コイツの頭の中で、今アタシは自分と同じ種類の人間として区分されているに違いない。

「ちょっとその目……。その目、やめろ! アタシは、少なくともアンタに蔑まれるいわれはないで。肩外れたのだってお姉は関係なくて……」

 その時だ。意外と律儀な桃太郎がゴミの山から顔を出した。

「声が高いぞよ。隣近所に知れてはコトが面倒になろう。して、うらしま、大家殿は入浴中ということじゃが、そろそろ出てまいられるのではないか?」

「ハッ!」

 お姉の話になると、うらしまは明かに動揺して周囲をキョロキョロ見回している。

「あ、あの人はお風呂が長いんだ。特に今日はお気に入りのユーカリの入浴剤を入れておいたから、あと20分は出てこないはず」

 ほぅ、と桃太郎が声をあげる。

「それだけ時があれば余裕よの。うらしま、そちも知恵を回したの」

「無い脳みそを振り絞って考えたんだ!」

 威張るな! 桃太郎も実は面白がってるだけなんちゃうか?

「絞るんならお姉との交渉に頭使いや。お姉かて鬼ちゃうで……多分。こんなドロボウみたいなことするより、小遣いちょっと上げてもらったらいいだけやん」

 そう言うとうらしまは千切れんばかりの勢いで首を横に振った。


「ひぃぃ……」

 心底怯えた目だ。

「……何でアンタ、お姉と結婚したん?」

「……ると、たまら…………」

「え?」

「のの……と、た……なくなっ…………」

「なに?」

 アタシと桃太郎は顔を見合わせた。手は一応、金目の物を求めてゴミの中の物を這い回っている。

「罵られると、たまらなくなるんだ」

「……………………」(アタシ、無言)

「……………………」(桃太郎、無言)

 ──アタシらにどうしろって言うんですかッ?

「うらしまって見下されるように言われるともぅ……ウズウズしちゃう。洗濯ばさみの攻撃を受けると僕は……あ、あふんっ」

                 【つづく

    このエントリーをはてなブックマークに追加 

  「HJMG!不毛さん」とは…こんなお話はコチラ

   HJMG!不毛さん サイトマップはコチラ


   HJMG!不毛さん第1話はコチラ 


良かったらマンガもみてね。こっちもアホだよ。
          ↓ ↓ ↓
【はじめましての方はこちらへどうぞ】