不毛なまでの怯え方~初めて会った義兄はヘンタイでした2

【HJMG!不毛さん9】
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「とにかく帰って。このドアは絶対開けへん!」

 うらしまの腕をガンガン挟みながら、アタシは扉を閉めようとした。そこへしたり顔でやってきたのがもう1人の問題児・桃太郎だ。

「冷たいおなごよのぅ。そちは」

 糾弾するようにアタシを見て、それから勝手にチェーンを外してしまった。

「そちがうらしまか。構わぬ。入れ。近うよれ」

 君がウワサの桃太郎くんっ!

 うらしまは叫んだ。2人は手を取り合っている。何だか通じるモノがあるらしい。

「桃太郎、何で招き入れるねん。お姉にとって臭いっちゅうことは、アタシらにとってもこの人は臭いってことやで」

 誰もアタシの話なんて聞いてない。それにしてもアタシに対してもご丁寧に「殿」付けで呼ぶ桃太郎に、初対面で「うらしま」と呼び捨てされるうちの義兄って……。

「早く、早く!」

 そんなうらしまは何事か叫んでアタシたちの手を引っ張った。どうやら階下の自分の部屋に連れて行こうとしているようだ。

「ちょっ、腕だけ引っ張らんといて。痛いって! 外れんねん、肩! 外れたことあるねん。外れやすいねん!」


 そうやって連れて行かれたのが1ー1号室。アタシの部屋の真下。大家のお姉(+うらしま)の部屋だ。入りたくないと断固抗議したのだが、うらしまに引っ張られ、アタシたちはそこに放り込まれた。

「こ、これは……」

 桃太郎が絶句している。

 無理もない。性格以外に、お姉の欠点はもう1つあったのだ。
 昔からあの人の部屋は恐ろしく汚い。服とか食器に始まって、ゴミや食べ物が悲惨なまでに散乱してる。出したものを決して片付けない。故に部屋はゴミの巣窟。いつもアタシが片付けさせられたものだ。
 臭ってないだけ、これはまだましな段階だ。
 勝手に部屋に入ったとお姉にバレるのも恐ろしいし、こんな部屋に足を踏み入れるのも気持ち悪いという思いから、アタシは玄関先で尻込みした。

「イヤや。帰る」

「頼む、リカちゃん!」

 そんなアタシの前に、うらしまがいきなり土下座した。

「な、何? やめてぇな、うらしま。顔上げてぇな」

 うらしまはゴミの中に顔面を埋める。

「お金がなくて困ってるんだ。リカちゃん、協力してくれ」

「義妹に無心か? アカンて。言っとくけどアタシはお金ないで。家出中やもん。文無しの16歳や」

「家賃払って昼メシ買って、会社に行く定期代出して……。お小遣いがもう1円もないんだ。だから協力してくれよ」

「へ?」

 会社行くって……この人、サラリーマンやったん? 何も説明されなかったけど、絶対無職と思ってた。昼ごはんに定期代……そりゃ大変やん。サラリーマンの悲哀やね。ん? ちょっと待って?

「家賃って? アンタはお姉の部屋に一緒に住んでんのちゃうの?」

 ポカンとした表情でうらしまは頷く。その顔を見て、ようやくアタシは合点がいった。

 姉は当然のように夫・うらしまからも家賃を取っているのだ。更に彼の給料は全額巻き上げ、コイツには僅かな額の小遣いのみを与えているようだ。お姉、金はため込んでる筈なのに、このセコさ。頭が下がるわ。

「アンタも何で従うの? だいたい嫁にサマ付けなのもどうかと思うで。その時点で主従関係できあがってるやん」

 まぁ、アタシも初対面のコイツをうらしまって名字呼び捨てにしてるけどな。

              【つづく

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