不毛な信念~人類の2分の1は既に宇宙人だという強烈な確信1

【HJMG!不毛さん14】
6.不毛な信念~人類の2分の1は既に宇宙人だという強烈な確信1
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「やっぱりこの辺には宇宙人が多いんや!」

 アタシは確信した。ちょっと変なテンションになっていたのも事実だ。
 だけど桃太郎にうらしま、何と言っても一寸法師と名乗ったあの小人!
 不思議ワールド大爆発や。
 このアパート、ある意味スゴイ!
 探せばそのテのヤツ、もっといるかもしれない。

「リ、リカ殿。いい加減に目を覚ますのじゃ」
 桃太郎のか細い声。途方に暮れたようにアタシの後ろをついて回る。
「もう3日もおかしな事を呟きながら、町中をうろうろしておるではないか。部屋にはちっとも入れてくれぬし……」

 福の神・一寸法師を見付けられてたまるかと思ってアタシは3日間、奴を完全に閉め出した。姉の部屋にも入れてもらえず、桃太郎は廊下で寝起きしているらしい。フン、ざまあみろ!

 髪切り事件で桃太郎を疑ったのは悪かったナァ……という考えが浮かばなくもない。
 犯人が一寸法師だったことは誰にも言っていないので、アパート内で未だ桃太郎は最も有力な容疑者として扱われているらしい。
 行く当てもなく、それでアタシの後を付いて回っているのだろう。
 でも、アタシは今忙しい。

「人類の2分の1が宇宙人やって話は周知の事実やろ」

「は、初耳じゃが……?」

 桃太郎は顔をしかめた。
 ホラ、宇宙人っぽいヤツに限ってこういう反応をする。誤魔化しているつもりなのだろう。

「人類が人工衛星飛ばしたり、探査ロケット飛ばしたり、あげくに宇宙ステーション造ったりしてんのは何でや?」

「いや、それは宇宙の資源の争奪戦……」

「アホか、アンタは? 何で人類が宇宙開発に熱心かっていうと、2分の1の宇宙人による故郷への郷愁の思いやねん。ノスタルジーや! 騙されたらアカン。NASAなんてほとんど全員宇宙人や!」

 どこに潜んでるかしれんで。そう囁くと、桃太郎は心なしか青ざめた。

「宇宙人探したい! 宇宙人探し隊!」


 玄関が開いてたもので、アタシは隣りの部屋に入っていった。
 室内──特に押入れを中心にくまなく探す
 一寸法師の姿が存在するくらいだ。宇宙人はどんな大きさなのか、どこに潜んでいるのか予想もつかない。

「ややややめてくださいぃ」

 気弱そうなメガネの女の子がアタシの腕に取りすがる。

「大丈夫やから。大丈夫。でも油断はできんからな」

「ななな何が大丈夫なんですか?」

 桃太郎が何か叫び、女の子が甲高い悲鳴をあげる中、アタシはマイペースで部屋の捜索を完了した。次に向かうのは1階だ。

「宇宙人探したい! 宇宙人探し隊っ!」

 目についた所をあちこち探して、これはクサイとピンときたのは玉手箱風の小さなボックスだった。うらしまの弁当箱のようだ。

「小人型が隠れるには最適なスペースやな」

「小人型? 型って何だい?」

 誰かがすぐ側でそう言ったが、アタシの意識はあまり現世こっちに留まってはいなかった。

「見付けたッ!」

 叫んで蓋を取ると、中にはビッシリイナゴが入っていた。つくだ煮や。

「うわ…」
 一瞬だけ、思考が現実に戻ってくる。
 「こんな弁当食べてたら会社の人、引くやろな」

 我ながら正しいツッコミだ。

「おぷぅっ!」

 イナゴ弁当を目の当たりにした桃太郎が、両手で口を押さえて嫌なポーズをしている。

「やめろーっ、桃太郎くん!」

「うげぽっ!」

 桃太郎とうらしまの悲鳴をバックに、アタシは部屋を飛び出した。

            【つづく

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