6.不毛な信念~人類の2分の1は既に宇宙人だという強烈な確信2
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自室に戻って押入れを開ける。
「ほ、リカ氏(うじ)か。拙者の事は誰にも言ってないでゴザルな」
一寸法師が飛び出してきた。アタシの肩にちょこんと乗る。
小鳥みたいで可愛らしい。細い目の奥で、何だか小賢しげな光が瞬いている。
小鳥みたいで可愛らしい。細い目の奥で、何だか小賢しげな光が瞬いている。
「拙者はそなただけの福の神でゴザルよ。米と金を供えれば、必ずやそなたの元に福が舞い込むでゴザル」
「へっへっへっ」
アタシの笑い声だ。宇宙人のなかでも、これは相当上ランクの宇宙人と遭遇できたようだ。
「そやなぁ、アタシの願いは……」
アタシの笑い声だ。宇宙人のなかでも、これは相当上ランクの宇宙人と遭遇できたようだ。
「そやなぁ、アタシの願いは……」
やっぱり高校行きたいってことかな……と言いかけたその時。背後でガタッと音がした。
「リ、リカ殿……」
桃太郎だ。
興奮していたせいでアタシ、玄関に鍵を掛けるのを忘れていたようだ。桃太郎はメガネを外したりかけたりしながら、アタシの方を──主に肩の辺りを凝視している。
「余、余は目が悪くての。つまり視力が……」
桃太郎だ。
興奮していたせいでアタシ、玄関に鍵を掛けるのを忘れていたようだ。桃太郎はメガネを外したりかけたりしながら、アタシの方を──主に肩の辺りを凝視している。
「余、余は目が悪くての。つまり視力が……」
──いや、そんな筈無い。いやいや、そんな筈はない。
ブツブツ呟きながら、遂にメガネは間近に迫った。
肩の上で小人が身じろぎするのが分かる。
肩の上で小人が身じろぎするのが分かる。
「拙者は福の……」
「キャーーーーッ!」
人の耳の真横で、桃太郎は突然すごい悲鳴をあげた。文句を言う間もなく、バタッと倒れる。
「も、桃太郎?」
泡吹いて昏倒している。
「ひ、人が失神するとこ初めて見たわ」
こんなひ弱な桃太郎には、鬼退治も世直しの旅も無理やろな。心底、そう思った。
※ ※ ※ ※ ※
※ ※ ※ ※ ※
「こんな所で、こんな時間に何をしておる?」
そう言われたのは、桃太郎失神騒動から半日ほど経ってからのことだった。
ここはオールド・ストーリーJ館、屋根の上。今は夜の12時を回ったところだ。 失神した桃太郎は随分長いこと眠りこけ(仕方ないから部屋に寝かせてやっ
た)、そして今、ようやく意識を取り戻したようだ。
「アタシ、UFO探してんねん。アッ、何やその目は。言っとくけど、アンタにツッコム資格はないで」
梯子が見当たらないので自分の部屋の窓から身を乗り出して屋根瓦をつかみ、腕の力だけでここまで必死によじ登ってきたのだ。
思った以上に大変な運動で、アタシはまた肩が抜けるかと思った。
でも屋根の上は気持ちいい。
思った以上に大変な運動で、アタシはまた肩が抜けるかと思った。
でも屋根の上は気持ちいい。
「ゆーふぉー……」
桃太郎、何かを考え込んでいる表情だ。
ひ弱なコヤツに屋根まで上がる力はなく、窓から上を見上げての会話である。
ひ弱なコヤツに屋根まで上がる力はなく、窓から上を見上げての会話である。
「余はさっき何かに遭遇したであろうか……。おかしな夢を見たような気がするのじゃが」
「………………」
無視してアタシは広大な夜空を眺めた。ここはトーキョーだけど都心からは、かなり外れた所で星もチラホラ見える。
「昔な、おじいちゃん家のマンションで見たんや。夜空に有り得ないオレンジと白の光! フワッと飛んだり、ピタッと止まってしばらく静止してから、急にジグザグ飛行したり、それから突然消えたり現れたり……」
「リカ殿……」
桃太郎がすごく何か言いたそうに口ごもった。
「違う! 飛行機違う! ヘリも飛行船も有りえへん。間違いなくUFOや! あの動き……見た人でないと分からんわ」
「お、落ち着くのだ、リカ殿」
必死の形相したメガネが突然窓枠を越えた。歯茎をむき出しにして「うぬぬ」と唸る。ひ弱桃太郎が屋根に這い上がってきたのだ。
「来るな!」
アタシは叫んだ。余計な雑念が入ると、UFOが逃げてしまう。
「お姉が昔言っててん! 果ても分からんこの宇宙に、生命(この場合、知的生命体に限定する)は自分たちだけやと思ってる人間の驕りが我慢できんわって。他にいる! 宇宙人は必ずいる! 地球の人口の半分がヤツらだって何で誰も信じへんの?」
「信じる方がどうかして……ゲフッ!」
桃太郎が滑った。パカッと口を開けたまま屋根から姿を消す。
ズン。
もの凄い地響きの中、アタシは屋根の上に仁王立ちした。
ズン。
もの凄い地響きの中、アタシは屋根の上に仁王立ちした。
「宇宙人を見付けても、それが友好的宇宙人か敵対的宇宙人か見極めが難しいんや! でもアタシにはできる。アタシにはできるねん……」
そこでスッパリ記憶が途切れた──ドシン。
アタシも屋根から落ちたのだ。
~思わず色んなことに対してツッこんでしまう関西人の血」につづく
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