7.不毛なサガ
~思わず色んなことに対してツッこんでしまう関西人の血1
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突然アホらしくなって、アタシは我に返った。
「アタシ、何であんなに必死になって宇宙人探してたんやろ」
ちょっとどうかしていた。精神状態も不安定だった。脳裏にうっすらと残る恥ずかしい記憶──色んなこと叫んで、アパート中を走り回ったような気がする。隣りの部屋の女の子にも迷惑かけた。明日にでも謝りに行かないと。
アタシと桃太郎は屋根から落ちた。悲しいことに誰も助けに来てくれず、自力で意識を回復し肩を貸し合って足を引きずりながら部屋へと帰ってきたのだ。
「おぅぅぅーーッ!」
窓の外から奇声が響く。更にゴォ~という地響きが。考えたら昨日の夜中も変な声が聞こえていた。犬の遠吠えとも違う。人間がもの凄い声で叫んでいるような。
「眠れへん……」何か変なモン住んでるんちゃうか、このアパート。「桃太郎、大丈夫か?」
話しかけると部屋の隅でタオルケットにくるまっていた桃太郎が身動ぎした。
「ムム……腰が……」
屋根から落ちた際の打撲が痛むのだろう。その件に関して、アタシは完全に知らん振りを決め込んだ。その時だ。
「キャーーーッ!」甲高い悲鳴。アタシはフトンから跳ね起きた。近い!「キャーーーッ! キャァーーーッ!」
悲鳴は続く。下の階──お姉の部屋からだ。アタシはハダシのまま部屋を飛び出した。
「あ、危ない! そちは残って余を守れ」
スゴイ勝手なことを言いながら桃太郎、アタシの後を付いてくる。
「お姉、大丈夫かッ?」
飛び込んだ1ー1号室。そこに広がる光景に、アタシは凍りつく。
「やめとくわ。このままの方が面白いもの」
汚いゴミ部屋の真ん中に座り込んで、お姉がけたたましい笑い声をあげていたのだ。
そのすぐ傍にうらしま。真っ青になってガクガク震えている。
「お許し下さい。おしおきして下さい。お許し下さいおしおき……」
しっかりしぃや!
肩をつかんで揺さぶると、再び「キャーッ!」と悲鳴をあげた。
……この声、この男の裏声だったのか。
「お、大家殿、何があったのじゃ」
うらしまでは埒が明かないと判断したのだろう。桃太郎がヒーヒー笑い転げるお姉に話しかけた。
「ほら、ご覧なさい」
言いながらお姉は自分の髪の毛をさわる。サラサラの長い髪をバッと前面に下ろした。
「キ、キャーーーッ!」
うらしまの悲鳴を背後に、アタシと桃太郎は身を寄せ合った。長い髪が顔面を覆って、そこから目だけがギョロリと覗いている。昔見た映画の恐ろしい幽霊のような姿だ。
「な、何やってんの、お姉……?」
アタシはようやくこの事態を察した。寝ていたうらしまを、このお姉が起こしたのだろう。
「わたしは前髪が伸びてきたから切ろうと思っただけよ。あの人が勝手に驚いただけ」
「じゃあ……じゃあ、さっさと切ったらいいじゃないですか!」
さすがにうらしまが抗議する。するとお姉、ニヤッと笑って彼を見た。
【つづく】
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