不毛なサガ~思わず色んなことに対してツッこんでしまう関西人の血2

HJMG!不毛さん17
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 ──ア、アンタら……。

 アタシは絶句した。これは一種のワールドや。
 完成されたワールドなんや。

 本人たちは楽しいみたい。

 それなら勝手にやってて。いちいちアタシを巻き込まんといて。

 欠伸をしながら2人に背を向けた時だ。
 廊下をパタパタ駆けてくる足音に気付いた。

「どどどどうしたんですかぁ」

 ワンテンポ遅れてメガネの女の子が飛び込んできたのだ。
 アタシの部屋の隣りの住人だ。たしか専門学校に通っているとか。

「いいい今しがた、すすすすごい悲鳴と、おおおおかしな笑い声がぁ」

 異様に高い音で、しかも息を吸い込みながら喋るから、ヘンな声だ。

「何でもないわよ」

 すました声に振り返ると、お姉の髪は元に戻っている。
 にこやかな笑顔に、さっきまでのケタケタ笑いは微塵も残っていない。
 これがこの人の恐ろしいところや。

「はぁ……」

 女の子がメガネを押し上げる。
 部屋にいる大勢の人間を不審そうに見回した。

「紹介するわ。この子、感電少女。この前引っ越してきたわたしの妹よ。リカ、こちらは2ー2号室にお住まいの……」

「さささ猿鳥サルトリワンです」

 オイオイ! ものスゴイ名前の人、来たで!?


「ワ、ワンちゃん? ワンちゃんっていうの? アタシは多部リカ。謝りに行こうと思っててん。昨日はゴメンな、突然侵入して。アタシ、ちょっとどうかしててん」

「リカちゃんは情緒不安定だったんだな」

 うらしまが、したり顔でアタシの肩を叩く。

「1人で押入れに向かってブツブツ喋ってるんだ。福の神様~とか言って。アハハハッ」

「ウフフフッ」

 お姉と2人して笑っている。アタシは桃太郎と顔を見合わせた。

 とりあえず、うらしまがムカツクということは置いといて。
 一寸法師の存在が他にバレていないとは幸いだ。

「べべべ別にあたし、気にしてませんから」

 言いながらワンちゃん、桃太郎を凝視している。
 身体が小刻みに揺れているのは、恐怖ゆえの震えか? 
 アタシが気にする筋合いは全くないが、何だがすごく恥ずかしくなった。
 話を逸らせようと大きな声を出す。

「ア、アタシ、大阪から来てん。だから関西弁なんやけど、分かる? 気にせんといてな」

「いいいいえぇ」

 ワンちゃん、プルプル首を振る。いいえ、と言っているらしい。
 気が弱いのか、アタシらに怯えているのか。

「淀川の河川敷で暮らしてたのよね、リカ」

 お姉が変なフォロー(?)を入れてきた。
 ワンちゃんの震えが小さくなる。
 まぁ、アタシが住んでたのは河川敷じゃなくて淀川沿いのアパートやけど。

「高校受験に失敗して、逃げるようにこっちへ来たのよね。リカ」

 お姉、余計な情報を暴露する。
 ワンちゃんは困ったようにオドオドとアタシを見た。
              【つづく

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