不毛なまでに、乙女~8人殺ったマフィアはりりしくてピンクの割烹着2

HJMG!不毛さん23
.不毛なまでに、乙女
 ~8人殺ったマフィアはりりしくてピンクの割烹着2
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 そこにいたのはピンクの割烹着を着た中年の男だった。
 彫りの深い顔立ち、頬には大きな傷。
 体格はラグビー選手を思わせるゴツさ。
 印象が、まるでマフィアのよう。

「しゃ、借金取り?」

 とっさにそう思った。するとマフィア(?)は額の皺をグッと深くした。

「何の事ですか。それより桃をむいたところです。食べますか?」

 きれいなお皿に、これまたきれいに飾り切りされた桃がキラキラ並んでいる。
 誘われるようにアタシはクマさんの楊枝を使ってそれを一つ、口に放り込んだ。

「どれ、かたじけない」桃太郎も横から手をのばす。

「オイシイ!」

 声を合わせて叫ぶと、そのマフィア(?)は微かな笑みを浮かべた。 
 りりしい微笑だ。
 マフィアのくせに何だか一陣の爽やかな風が吹き抜けるようなこの感じ。
 アタシは決してホレっぽい方ではない。
 けれど今はこのサワヤカさんに心、癒されたい。

「……って待てや」
 自然にいるけど、この人何なん?
「お姉、お姉、ついに再婚したん? 賢明な選択やわ!」
 
 窓辺で桃を頬張っていた姉はこっちを見て「オホホ」と笑った。

「この方、ハウスキーパーよ。週に1回、お掃除に来てもらうことにしたの」

 あ、ああ……そうか。それでピンクの割烹着かぁ。
(ん? 何でピンク?)
 それはそうと、お姉は自分で掃除する気はないんか……そうなんや、ないんや。まぁ、この人の場合プロの手を借りるのが正しい選択かもしれん。

「俺は亀山社中カメヤマシャチュウと申します」

 マフィアのハウスキーパーはアタシの前できれいにお辞儀した。

「い、妹のリカです。関西弁は気にせんといてください。え……何? 亀山さん? 今のは名前ですか?」

 マフィア──本名・亀山社中はコクリとサワヤカに頷いた。
 うわぁ、スゴイ名前。うわぁぁ…。
 明治維新の英雄──時代の風雲児が創った会社と同じ名称や。
 大丈夫か? アタシとしてはクレーム来んことを祈るばかりやで?


「カ、カメさんやな。カメさんって呼んでいい?」

「………………」

 返事がない。
 見るとカメさんは額に皺を深く刻んで、ある一点を凝視していた。
 桃太郎の草鞋だ。端がほつれている。

「繕いたい……」

 え?

 カメさん、手がプルプルしてきた。
 小さな動きだが、宙で針に糸を通す仕草をし、その端を玉結びしている。
 そして上下に動かし始めた。ほつれた所を糸でかがっているようだ。

「エアか? エア縫いか?」

 一頻りその動きを繰り返して、カメさんは満足したのだろう。
「ふぅ」と息をついてその場に腰を下ろす。
 アタシの胸に、何となく嫌な予感が走った。
 騙された感はあったけど、この人も不毛でヘンな人なんじゃ……。

              【つづく

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