9.不毛なまでに、乙女
~8人殺ったマフィアはりりしくてピンクの割烹着3
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「あの、お姉……?」
しかし疑惑を正す間もない。
玄関の扉がすごい勢いで開かれた。
全身洗濯ばさみ男が飛び込んできたのだ。
明かに不審者の乱入に、桃太郎が甲高い悲鳴をあげる。
洗濯ばさみ男──うらしまの攻撃。
「アタック! アタック!」
全身をグイグイとカメさんに押し付ける。
おしおきを受けて汗だくになった身体で。
アタシはその攻撃を、心の中で「ヌメヌメ・アタック」と名付けた。
どうやらうらしまなりに自分の立場の危うさを自覚したらしい。
「掃除も洗濯も僕がやる! 乙姫サマの忠実な下僕は僕1人だ!」
……自分でソレ言っちゃおしまいやろ、義兄よ。
「乙姫サマ、騙されちゃいけません。コイツはすでに8人殺ってる顔だッ!」
攻撃を受けても微動だにしないカメさん、辛そうに目を伏せた。
「ひ、人のこと、見かけで判断するな!」
アタシが逆上してうらしまの尻を叩くと、奴は「あふん!」と一際エロい悲鳴を漏らす。
そこへまだ1人厄介者──今度はワンちゃんが現れた。
(いや、悪いけど厄介者やで?)
「ととと薹(トウ)が立った若執事のようですぅぅぅ!」
挨拶も自己紹介も何もなく、いきなりそう言った。
カメさんを凝視している。
若執事って何や?
薹が立ってるなら、別に普通の執事でいいやん……いや、だから執事って何やねん。
何の妄想や。ワンちゃん、この子もよく分からん子やわ。
「な、何の用……?」
アタシの問いにワンちゃん、ハッとしたように手にしていた袋を差し出した。
「もも桃さまに差し入れ。きききびだんご、作りすぎちゃったんで」
「ほぅ、かたじけない」
桃太郎、受け取って1人でモグモグ食べだした。
実はこれが初めてではない。
ワンちゃんはこのところほぼ毎日、こうやって桃太郎にきびだんごを届けに来るのだ。
「何でワンちゃん、毎日きびだんごを作りすぎるくらい作ってんの? どういう食生活?」
ワンちゃんはポッと頬を染めて俯いた。
「……恋か」
ボソッと呟いたのはカメさんだ。
アタシは悪いけど引いた。
うわ、何やこの世界。居心地悪っ! ひどく甘酸っぱい!
【つづく】
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明かに不審者の乱入に、桃太郎が甲高い悲鳴をあげる。
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おしおきを受けて汗だくになった身体で。
アタシはその攻撃を、心の中で「ヌメヌメ・アタック」と名付けた。
そこへまだ1人厄介者──今度はワンちゃんが現れた。
(いや、悪いけど厄介者やで?)
カメさんを凝視している。
薹が立ってるなら、別に普通の執事でいいやん……いや、だから執事って何やねん。
何の妄想や。ワンちゃん、この子もよく分からん子やわ。
実はこれが初めてではない。
ワンちゃんはこのところほぼ毎日、こうやって桃太郎にきびだんごを届けに来るのだ。
アタシは悪いけど引いた。
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