不毛大作戦!~恋だか変だか、何かそんな感じ3

【HJMG!不毛さん28】
10.不毛大作戦!~恋だか変だか、何かそんな感じ3
      【はじめましての方はこちらへどうぞ】
      【前回のお話はコチラ

 つまり、会話にちょっとした行き違いがあって桃太郎はデートではなく、世直しの旅(日帰り)に出発したつもりなのだ。
 べ、別にアタシのせいちゃう。

 心の中でしつこく言い訳しながら、アタシはアンパンをかじった。
 電柱の影から桃太郎ホシを見張るのだ。

「リカさん、お腹がすきましたか?」

 カメさんが不審げにアタシを見る。
 まだ10時。朝寝坊のアタシは、さっき朝ごはんを食べたとこや。

「そういうわけちゃうねんけど、張り込みや尾行ったらやっぱりアンパンとコーヒー牛乳やろ。アタシ、古いタイプの人間やねん」

 想像の中では「しっかり者のリカ警部」と「おっちょこちょいの部下のカメさん」や。とにかく今日はそんな気分やねん。

 まぁ、時期がアレやからTシャツと短パン、愛用の下駄やけど。

「あぁ、見てください。お2人、映画館へ向かっていますよ」

 心の中で刑事ごっこしてたアタシの腕をカメさんがすごい力で引っ張る。

「痛いって! 肩外れるやろ! アタシ、外れたことあるねんって」

「す、すいません」

 初デートの定番、映画館前でアタシらは立ち止まる。

「あれ、良さそうですね」

 カメさんが指差したポスターは話題の邦画だ。
 ヤンキーっぽい男と、かわいい女の子が寂しそうに笑っている写真。
『いつまでも、あなたは私の胸で笑ってる──』というキャッチコピーで既にカメさん、ウルウルきている。

「どうせ男の方が死ぬんや。病気か何かで。展開読めんねん。ツマランわ! それより隣りの洋画見たいわ。最強ヒロインが人類を守る為、闘いまくるねん。かっこいいわー」

「そ、そうですか……」

 ふと隣りを見て、カメさんが傷付いた表情なのに気付く。

「ごめんなさい。つまらんなんて言ってゴメンナサイ」

 2人は、しかし映画館の前を素通りして商店街を抜けていった。

「何故ですかっ!」

 カメさん、ショックを受けてる。
 尾行の名目を借りて、泣ける純愛映画を見る気満々だったのだろう。
 既に8人殺ってるマフィアのような外見のオッサンが、恋愛映画を見て声を殺して泣いている様をリアルに想像してしまった。

「イヤや……」


 その間にも気を取り直したカメさんは近くのカフェにアタシを引っ張って入った。
 別に桃太郎たちがここに来たわけではない。
 2人は向かいの本屋の店先で分厚いマンガ雑誌を立ち読みしている。
 初デートでこれは、ちょっと痛い光景やで。

「ここ、イチゴのケーキが最高に可愛くておいしいんです。4層からなるムースが……」

 2人の姿が見えるオープン席に陣取って、カメさんはバッグから怪しげな棒状の物を取り出した。
 手元のボタンで伸縮自在の棒。先端に小さなミラーと集音マイクが取り付けられている。

「高枝切バサミを改造しました。夕べ、徹夜で作りました」

 これで離れた位置からでも、2人の様子を克明に観察できるというわけだ。
 てか、せめて自撮り棒持ってきてほしかった。
 改造しましたって……。

「……カメさん、アンタほとんど犯罪者やで?」

 ああ、アタシの周り、急速にヘンなヤツ増えていく……。

            【つづく

    このエントリーをはてなブックマークに追加 

  「HJMG!不毛さん」とは…こんなお話はコチラ

   HJMG!不毛さん サイトマップはコチラ


   HJMG!不毛さん第1話はコチラ 


良かったらマンガもみてね。こっちもアホだよ。
          ↓ ↓ ↓
【はじめましての方はこちらへどうぞ】