33.トラウマ万歳~よみがえる不毛人生初期のころ1

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 洗濯がうまくいかなかったとカメさん、落ち込んでいる。

「俺は何のために生きているのか、分からなくなりました」

 別に洗濯するために生きてるわけ違(ちゃ)うやろ! どいつもこいつもウザイねん。いい加減にしろや!
 ……なんてことは、さすがに口に出せない。
 カメさん、見るからにズズン……と暗い。スーパー家政婦さんのプライド、ズタズタらしい。

「このKILLTシャツが異常なんや! 重ッ!」

 ズシッとくる。重さで手首を持っていかれそうや。赤短パンもまた然り。何の素材でできてるんや、コレ。総重量20キロはあろうか。手足首のアンクルだけじゃなく、かぐやちゃんは衣服にも恐ろしく負荷を与えて鍛えているらしい。そう、全ては実戦に備えて。

「洗濯を失敗するようでは、俺はハウスキーパー失格だ……」

 カメさんはほめられると育つタイプだと、アタシは薄々気付いていた。失敗すると途端に落ち込む。かわいそうで見てられない。見苦しくて見てられない。

「カ、カメさんは天才や。ナンバーワン・ハウスキーパーやもん。ダントツや。カメさんのおかげでお姉のゴミ……きたな……ご、へ……部屋がどんだけ救われてるか……。感謝しても足りんわ。いや、て言うか、そもそも何でかぐやちゃんの洗濯をアタシらがするねん。本人にやらせたらいいやん!」

 クソー! この忌々しいKILLTシャツ。あのデンパ野郎め! 蘇る負の記憶。足裏のダメージはまだ癒えない。

「いつか復讐してやる……!」アタシは心に誓っていた。

 しかし褒めまくったおかげか、カメさんは瞬時に立ち直っていた。この人も勝手な人や。

「俺について家事を学べばいいですよ、リカさん」

「……はぁ、ありがたいことです」

 疲れるわ、この人。

 週イチの契約で来る筈のカメさん、しかし連日入り浸っている。お姉が散らかすから、見張ってないと不安らしい。それはいいけど、なぜかアタシを助手か何かと思ってるらしく、家事のサポートや、コインランドリーへの同行を強要するのだ。2人でアパートに帰り、アタシはカメさんについてお姉の部屋へと入った。幸いなことに、この部屋の変態住民は留守のようだ。うらしまは会社、お姉は買い物か? アタシは勝手に冷蔵庫を開けた。

「カメさん、ゴメンな。冷蔵庫こっそり使わせてもらって」

 隅の方にアタシの秘蔵のチョコレートが、キレイなラップ(リボン付)にくるまれて隠してある。このリボンはカメさんの仕業やな。ストレス緩和効果のあるチョコを、アタシはガリガリ食べた。無心で食った。実はアタシの部屋には冷蔵庫がないのだ。

「これから夏にかけて食べ物腐るから不安やわ。冷蔵庫欲しいけどお金ないし。お姉に借りたらマジでショバ代とられるしな」

「でもこちらの冷蔵庫も限界のようです。奥に入れていた刻みネギが凍っていました」

 うらしまが寝ぼけてソレを食べてたらしい。想像すると何だか怖い光景やけど、アタシには関係ない話や。カメさんは尚も何か言いかけるが、アタシは知らん振りしてチョコを片手に自分の部屋に帰った。

「ただいまー、桃太郎。お土産あるで……アレ?」

つづく

   


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