34.最後の刺客・根田太郎登場~不毛アパート全員集合!3

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「何や、その設定は。それだけで1本、マトモな(?)小説でっちあげられるで。むしろそっちやで? なぁ! むしろそっちやろ!?」

「は、はぁ…」

 困った人やと思いながら、アタシは根田さんのフトンをかけなおした。何があったか知らんけど、3年の眠りって一体どういうもんやろな、なんて考えながら。

 その時だ。

 一瞬、目を開けた根田さん。アタシとガチッと視線が合った。

「…………! ね、根田さん、今すこし微笑んだ……」

 腰を抜かしてその場にヘナヘナとへたり込んだアタシを、桃太郎が支えてくれる──いや、支えようとして一緒に転んだ。

「あ痛ァ! リ、リカ殿? 何を申しておる? 根田殿はずっと眠っておいでじゃ」

「え?」

 アタシたちの後ろでカメさんが呻き声をあげる。

「きゅ、急に眠気が……」

 突然にその場に倒れこむ。

「亀殿、しっかり……ムニャ」

 間髪入れず桃太郎もコテンと寝てしまう。

 正体不明の攻撃を喰らったわけじゃない。みんな気持ちよくなっただけや。なにせ根田さん、スヤスヤと気持ち良さそうに眠ってる。見ているうちにアタシもボーッと暖かくなって瞼が落ちてきた。

「グゥ」

 安らかな気持ち。ああ、こんな深い眠りは初めてだ。

 気づいた時、そこに根田さんの姿はなかった。アタシら3人は無人の1─2号室で、寄り添って眠りこけていたのだ。3人ともヨダレまみれだ。

 外はもう暗い。アタシらは呆然と顔を見合わせた。なぜだかとても満ち足りた気分。かぐやちゃんへの復讐心も、歯医者への恐怖もスッと消えていた。

 アタシは悟りを開いたのだ。

「全て空しい。しかし全て素晴らしい。人の世は儚く一瞬だ。でもアタシにとっては、それが永遠なんや」

「な、何を言っておるのじゃ?」

「見える。光が…」

「そ、そちは何を言っておるのか?」

 桃太郎、ドン引きでこっち見てる。

 

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