「うちのアパート、イイイケメン揃いですからぁ?」
自信なさそうに、しかし言い切った。
「みみみ水着でキラキラァ。乳首もチラチラァ。イケメンでプリップリッ」
その言い方、気に入ったみたい。
「た、確かにみんなで海とか山にキャンプに行くのは楽しそうやな。行こな」
でも、今度な! 念押ししといた。一応。今度──は多分、来ない。
「あああたし、ネットで調べてみますぅ。きき近所で安くて楽しいスポットがあったら、それが一番いいですから」
ワンちゃん、我に返ってマトモなことを言った。
そして翌日。
「36.不毛ワールド最終話~笑ってくれればそれで良し」につづく
「つつつつくだに工場ですぅ」
すごい地味なセレクトしてやって来た。
「佃煮工場?」
電車で5駅向こうに有名なつくだに工場があるらしい。
そこが2週間の間だけ見学を受け付けているという。無料(タダ)で入れて、お土産に佃煮をくれるらしい。期限ギリギリだったので慌てて申し込んだら、最終日に予約がとれたということだ。
佃煮を貰えるってところがイイ!
「さすがワンちゃん。いい目してんな、アンタ」
そう言うと気弱なワンちゃん、珍しく胸を張った。
「これでアパートの皆が仲良くなればいいです。ああたしももも桃さまと仲良くなれればぁ!」
……狙いはそっちか、ワンちゃん。
「でもなぁ、何回も言うようやけどこのメンバー引き連れて公共機関を利用すんのは……」
「だだ大丈夫ですよ。大家さんも一緒ですし、それにまぁ亀山さんやオオオキナさんもいるわけですし。まぁ、何とか?」
そうか、ワンちゃんの中ではカメさんとオキナはワリにマトモな部類に入ってるわけや。そうなんや……不安や。
ともあれアパート中に告知して、アタシらは結構楽しみにその日を待っていた。
まさかその日に、あんな出来事が起ころうとは──。不毛ワールド始まって以来の大事件、そして最後の珍事が、そう、文字通り噴き上がってしまったのだ。
「36.不毛ワールド最終話~笑ってくれればそれで良し」につづく