22.不毛恋バナ~甘酸っぱく始まったものの、苦々しく終了する1

HJMG!不毛さん64
22.不毛恋バナ~甘酸っぱく始まったものの、苦々しく終了する1
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「カカカカメさんは恋人っているんでしょうかね」

 不意に背後から生温かい息が。
 アタシは問題集を取り落とした。

「うわ、ビックリした。ワンちゃん、いつの間に入ってきたん?」

「カカカカメさんの恋人って男でしょうかね、女でしょうかね」

 メガネが爛々と光っている。
 アタシは引いた。

「さ、さぁ? アタシは聞いたことないけどな。けどまぁ、カメさんのことやし、何かスゴイ……イタリアのセレブとか、元CIAのスパイとか、いやいや日本の彫師の姉(アネ)さんとか……とにかくそういうイメージやで?」

 どういうイメージやねん、アタシ。

 ワンちゃんはアタシの話を聞いてはいない。
 ハァハァ言いながら妄想を膨らませてた。

「カカカカメさんの恋バナ……聞きたいですよね」

 そう言えば……と思い出した。
 実はアタシはカメさんと話す機会が意外と多い。

「カメさんの好きなタイプなら知ってんで。一緒に掃除してる時、聞いたもん」

「え、どんな?」
「詳しく聞かせなさいよ」

 ワンちゃんはもちろん、お姉ですらも色めき立つ。
 やっぱりみんな女子なんや。
 こんなメンバーでも、このテの話は大好きなんやな。

「カメさんの好きなタイプはな、体長は小さくて、目が大きくて、声にものすごく特徴あって、元気だけどおっちょこちょいな食いしん坊らしいで」

「ななな何ですか、そんな昔のアイドルみたいな設定は。やけに細かいですし。体長って……?」

「そうやろ。アタシもそう言ったらカメさん、広告の裏に絵描きだしてな」

 慣れた風にサラサラ描きあがったのはこんなものだった。

1.茶色と白のハムスター
2.リボン巻いた白いアヒル
3.白いこねこ(帽子付き)

 それらは、どれもどこかで見たことのあるキャラクターばかりだった。
 子供向けアニメのキャラクターや、どこぞのゆるキャラやな。
 自分で描いたそれを見てカメさんは「あぁぁ、かわいいぃぃ!」と押し殺した声で叫んで、全身プルプルさせる。

 アレにはビックリしたわ。
 やっぱりカメさん、変な人やで。
 お姉とワンちゃんの興味もサッと離れていくのが分かった。

「それはそうとお姉。ずっと聞こうと思っててん。何であのうらしまと結婚したん? 早いとこ手打たな、生涯の過ちになんで」

 人が心底心配して言ってるのに、姉はケラケラ笑っている。

「そもそもお姉の好みのタイプってどんな?」

 そうねぇ……、と姉はニンマリ笑みを浮かべた。


「かぐや様は別格として……。人生の最初の一段をつまづいて、少しずつ転がり落ちていく。駄目でボロボロになっていく少年(10代)を見るのがいいわね。たまらないわ。掻き立てられるもの」

 お姉、うっとり目を閉じた。

「………………そうなんや」

 どっちにしろ、うらしまとは違う。

              【つづく

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