22.不毛恋バナ~甘酸っぱく始まったものの、苦々しく終了する2

HJMG!不毛さん65
22.不毛恋バナ~甘酸っぱく始まったものの、苦々しく終了する2
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「じゃ、じゃあ、ワンちゃんは?」

 言ってからシマッタと思った。
 ワンちゃんが顔を真っ赤にしたからだ。

「あああののぅ、メガネとスーツが……。スーツとメガネが。あと一人称に特徴があって……そんな感じの人が好きです。ヤだぁ、リカさんっ!」

 突然、顔面張られた。
 バシーンとすごい音がする。

「あ痛っ……」

「ううううちのアパートがまるで少女マンガに出てくるセレブのアパートみたいだったらいいですよね」

 またワンちゃん、妙なこと言い出したで。
 そもそもセレブはアパート住まんやろ?

「住んでる男子は、みんなイケメンでセレブなんですぅ! 恋愛模様、渦巻いてるんですぅ」

 好き勝手なこと言ってる。

「少女マンガは無理やで。アタシら、どう頑張っても痛い系のギャグマンガや。アタシもそのへんの分は弁えてるつもりやで」

 大体うちのアパートの住民、みんなハズレの部類や。
 ドMと乙女、ノーパンの変態に、電波サン。
 それから何と言っても桃太郎と小人!

 あとは引きこもりばっかりや。
 まぁアタシら女も、人のことは言えんけどな。

「しゃあないやん。来世に期待し? アタシな、生まれ変わったらまつ毛になりたいねん」

「は、まつ毛ですか?」

 パチクリ自分の目元を指差すワンちゃん。

「体中の毛で一番のセレブはまつ毛やろ。だって同じ毛でも、足とか脇に生えたら憎まれた上、問答無用で剃られるやん。その点、まつ毛は違うで。より長く、より多く見えるようにあらゆる手を尽くしてもらえる。きれいなキラキラつけたり、オシャレしてもらえるし。毛のセレブは断然まつ毛やって!」

「はぁ、そう言われてみれば……」

「あるいは中年男性の頭髪(特に頭頂部)ね」

 お姉の意見もまた絶妙な所ついてるな!


 アタシらは大声で笑いあう。

 そこへ風呂屋根の修理が終わったと、うらしまがやって来た。
 アタシらの話の輪に入りたくてウズウズしている感じだったが、気味悪いので自然に無視する。

「僕は……僕は毛に生まれ変わるなら、やっぱりヘソから出ているアレになりたい! え? みんなヘソにあるだろ、毛が。僕にはあるよ。ホラ!」

「えっと……うらしま、修理早かったな。もう1週間はかかると思ってたわ。アタシは今日も銭湯行く心積もりやったで。お姉、よかったな。お風呂好きやもんな」

「どうせ修理するなら、思い切って改装したら良かったかしら。ジャグジーなんていいわね」

 財力も考えず、お姉がポツリと呟いた。
 そこにうらしまが食いつく。

「ジャグジー? それなら僕がストローを5、6本くわえて潜りましょうか? 湯船の中でブクブクします」

「そうねぇ」
 お姉、ニヤリと笑う。
「60分間安定した泡の威力をキープできるなら任命してあげてもいいわよ」

 もちろん息継ぎなしでね、と付け加えたお姉はとても楽しそうだった。

「く、苦しくなりますっ。あふんっ!」

 例の叫びを発して、うらしまは身をくねらせる。

「でも嫌だわ。あなたの息が混ざったお湯なんて……汚くて」

「あっふん……! もっと!」

 お姉はオホホと笑った。

「ほらリカ、あなたも何か言っておやりなさい。面白いわよ」

「い、イヤや……」

 めくるめく変態ワールドに妹(アタシ)を巻き込まんといて。

 て言うかアタシ、勉強しに来てんけどな。


「23.みんなでおでかけ~サイクリング・不毛・ヤッホー!」につづく



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