【HJMG!不毛さん66】
23.みんなでおでかけ~サイクリング・不毛・ヤッホー!1【はじめましての方はこちらへどうぞ】
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ズボンを失くした桃太郎は、しばらく短パンで過ごすことになった。
上はスーツにネクタイ。
下はうらしまに借りた短パン、そして草鞋。
出かける時は常に背に「勝訴」の旗。
最近暑くなってムレるとかで「日本一」のハチマキはしなくなったが、この上ない不審人物という印象が拭えるものではない。
さて、その桃太郎──。
「余と共に参ろう」
珍しく早起きした桃太郎、弁当箱に話しかけている。
あれはゴキブリ騒動で家を失った小人用にと、アタシがもらってきたワンちゃんのお古の弁当箱だ。
「たまには良いではないか。ノンビリと羽を休めるのも」
「そうでゴザルな。拙者も行って良いでゴザルか?」
「無論じゃ」
桃太郎と一寸法師の会話だ。
ちょっと待て。
アタシ、言いたい事いっぱいある。
そもそも桃太郎、アンタは羽休めっぱなしやろ。
それからこの2人、いつの間に仲良くなった?
かぐやちゃん騒動前後、アタシは3日程家を出たから。
その間に奴らは友情を育んだらしい。
なんかアタシ、すごい疎外感が……。
一寸法師用弁当箱を腰に下げ、桃太郎は意気揚々と立ち上がった。
「リカ殿、付いてまいれ」
そのまま玄関を出て行く。
「早う早う!」と命令され、アタシはカチンときた。
「アンタの家老違(ちゃ)うで。アタシはアンタの家老違(ちゃ)う!」
こうしてあたしら2人──いや、法師も入れて3人か──はオールド・ストーリーJ館玄関にやって来た。
すでにオキナとかぐやちゃんが待っている。
せっかくこうやってアパートのみんなが仲良く(?)なったんだから、どこかへ出かけようとアタシが提案したのだ。
ところがみんな、あまりノリ気じゃないみたい。
「せっかくの日曜にどこに行くつもりだ?」
かぐやちゃんが言えば、オキナも肩を竦める。
「さぁ、近場じゃない~?」
アンタら、日曜とか関係ないやん!
提案そのものは悪くないというものの、ものすごく面倒臭そうだ。
こ、これが関西とトーキョーの温度差なのか?
「おはようございます、皆さん」
そこへカメさん、ピンクジャージで現れた。
お弁当箱をたくさん抱えている。
ハイキング気分満々や。
「そ、それは?」
「皆さんのお弁当を作りました。早起きをしておにぎりを100個」
「ひゃ、100個のおにぎり……ッ!」
かぐやちゃんのテンションがマックスに上昇した。
声を張り上げる。
「おにぎり! 100個のおにぎりッ!」
ギスギスしていた空気が一気に緩む。
かぐやちゃんの雄叫びを聞いて、アタシらはなぜだか和んだのだ。
【つづく】
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