24.みんなでおでかけ~不毛・川原でヤッホー!1

HJMG!不毛さん69
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「独り占めはアカン!」

 アタシは宣言した。
 曲乗りしていたかぐやちゃんを自転車から引きずり下ろす。

「これはみんなの自転車や! アタシが拾ってきたから、特にアタシの自転車なんや!」

 かぐやちゃんは返事もしない。
 ポカンとしている。

 電波を発して、まったく別次元の何かと交信しているような感じだ。
 アタシの言うことなんて全く聞いちゃいない。
 こっちを見ようとすらしない。

 近所のドブ川の岸には一応堤防がある。
 犬の散歩をしている人やキャッチボールしてる人など、いつも賑わっている場所だ。

 そこにKILLTシャツに赤短パンの絶世の美青年が、ものすごい笑顔で真っ赤な自転車を曲乗りして来たものだから、蜘蛛の子を散らすように人は去った。

「あ、赤い悪魔……あの赤い悪魔に早う腰掛けたい……」

 桃太郎がうずうずしている。
 自転車に早く乗りたくてたまらないらしい。

 赤い悪魔って何やねん。
 さっきは鉄の化け物って言ってたくせに。

「桃太郎、アンタも独り占めはアカンで」

 アタシが釘をさすと、奴は神妙な表情で頷いた。

「承知しておる。余は考えた。皆で乗れる工夫をしようではないか」

 そう言って桃太郎は、まず自分が赤い悪魔に乗った。
 手招きに応じてうらしまが近付き、後ろに座る。
 更にカメさんが荷台の後ろに足先を引っ掛けて立った。

「うむ、良い良い。最適な平衡感覚じゃ」

 器用に小回り利かせて、その場をクルクル回りだす。
 大柄な男二人を乗せているにもかかわらず、小さな桃太郎に疲れは見えない。

「ほぅ! ほぅほぅぅ! ほっほほぅ!」

 興奮したのか、ホゥホゥ叫びながら堤防遊歩道を走り出して行ってしまった。

「桃太郎、戻って来い!」

 すると奴は自転車漕ぎながら右手をすっと伸ばす。
 そして、肘の所でクイッと曲げた。
 あれは自転車ルールや。
 方向指示器の代わりに、己の腕で行く方を示すものだ。

「何あれ? 芸人なの? 電波なの? ああいう芸風(キャラ)なワケ? そ、それとも天然?」

 オキナが呻く。
 桃太郎という存在に、初めて混乱を来たしたようだ。


「そちは余の右へ。ワン殿、そちは左へ乗るが良い」

 従う必要なんてないのに、アタシとワンちゃんは桃太郎の座るサドルにお尻の端っこを乗っけた。
 サドルは小さい。
 アタシたち二人は手を繋ぎ、互いの身体を引っ張り合うことで落下を防ぐ。
 更に全体のバランスを取る為に、もう片方の手を天高く差し伸べた。
 自然と笑顔になる。

「良いぞ、良いぞ。はっはっは」

 こうしてアタシたちは5人で1台の自転車を転がした。

「待って待って!」
 オキナがビート板を抱えて追いかけて来た。
 その辺に落ちていたのだろう。ロープも持っている。
「このビート板を繋げさせて~!」

 ビート板にロープを巻き、その先を荷台にくくりつけた。
 自分はその上にピョンと飛び乗る。

 自転車に引っ張られ、ズルズルと堤防を走る。
 タイヤが付いてたら、スピードついていい感じに爽快な走りを見せるだろう。
 でも、これじゃ単に引きずられるだけだ。
 オキナは身体を斜めに倒して地面にこめかみを擦りつける。

「おでこがぁ~! ボクのおでこが煙をあげてる~!」

 壮絶なセリフのわりに、奴は何だか楽しそうだ。
 その様を、ワンちゃんのデジカメ持ったお姉がケタケタ笑いながら激写していた。

つづく

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