【HJMG!不毛さん75】
26.霊感少年G登場~不毛か呪いか、右足は骨折か?1【はじめましての方はこちらへどうぞ】
ゆっくりと室内に入っていく。
「ちょっと待って。何でアタシが先頭やねん」
アタシの背に隠れるようにして桃太郎。その後にカメさん、ワンちゃん、うらしまと続く。怖いもの知らずである筈のお姉は、廊下から笑いながらこっち見てるだけ。その向こうでオキナが早くも腰を抜かしてた。更に向こうでかぐやちゃん、ボケッと余所を向いてる。
そこは噂の1─3号室。8畳の板間。手前に小さな台所。向こうに押し入れ、奥に窓。そこには暗い色したカーテンが下がっている。室内の造りは、アタシの住む部屋と変わらない。
ただ、空気が重い……。ズシッと重い。異様な感じや。ず、ずっと閉め切ってたんやもん。それは無理ないで?
昼間なのに薄暗い室内。足元も覚束ないのにみんながグイグイ背中を押してくる。
「痛いって! 肩のダメージと、アタシ足も痛いねん!」
とにかくカーテンを開ける。パッと光が差した瞬間、みんなの悲鳴が背後にあがった。振り返って、アタシも絶句する。
「パ、パンツっ!」室内には見覚えあるパンツがきれいに並べられていたのだ。知らずに踏んでいたみんなが、慌てて足をのける。「ぜ、全部アタシのパンツや……」
何が起こった? この事態は何や?
「はっ、余のズボンもここに!」
パンツの海から桃太郎が引っ張り出したのは、失くしていたズボンや。
「幽霊だよ! 幽霊の仕業だよッ!」
オキナの金切り声。
「ゆ、幽霊か?」
ちょっと待って。怖いのか滑稽なのか分からん。何で幽霊が人のパンツ盗んで、部屋中に並べるんや? ホラーなのか、笑いなのかが分からん。
「こ、この話は、ホノボノジャパニーズメルヘンギャグ路線ちゃうんか!」
何じゃそれは、と桃太郎がズボンはきながらこっちを見る。
その時だ。異様な空気が室内を包んだ。ヒタヒタと静かな足音が近付いて来る。
「ここにはれいどうがとおっているよ」
抑揚のない陰気な低い声。突然背後から投げられたその言葉に、アタシらは肝を冷やした。桃太郎が「ギャッ!」と悲鳴をあげて、アタシの腕に取りすがる。
「だ、大丈夫や。アタシがついてる」
言いながらアタシら、変な関係やなと思った。
1─3号室玄関前。小柄な少年──よく見れば年いってる?──が陰気に立ち尽くしている。大きな目でじーっとこっちを見て、ゆっくりボソボソ喋りだす。
「ここにはれいどうがとおっているよ」
え、何や? ここにはれいど…れいどう…霊道!?
霊道が通っているよって言った!?
霊道って何や! 一気に室温が下がった。
今回に関しては、アタシもさすがに宇宙人とは思わない。むしろ幽霊か何かかと…。
【つづく】
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