【HJMG!不毛さん76】
26.霊感少年G登場~不毛か呪いか、右足は骨折か?2【はじめましての方はこちらへどうぞ】
「アンタ……誰?」
少年の大きな目がクルリとこちらを向く。ひぃ、怖い。
「れいどうとは……」
「やっぱり! ホラ、やっぱりね!」
少年が口を開きかけた直前、オキナが突然割って入ってきた。
「ボク、霊感あるって言ってんじゃん。霊的なモノが近くにいると、すごく身体がダルめになって眠くなっちゃうんだ。朝になっても、昼になっても、夜になっても、目覚めなかったりするんだよ。体力とぉ、精神力をぉ削り取られてくかんじ?」
何やその喋り方。ウザイな。
「それはアンタが怠け者なだけ違(ちゃ)うんか?」
そう言うとオキナは、アタシを見下すように「ハッ!」と笑った。
「霊感のない人には、何言ってもムダだって分かってるけどね~」
「ふ、ふーん」
オキナはものすごく得意気だ。アンタに霊感があるのはいいけど、何でアタシがそのことに関して蔑まれんとアカンねん。腑に落ちない。
「こここの人の言うとおりです。れれれ霊道が通ってますぅ」
ワンちゃんまで言い出した。アカン。みんな変な目つきになってきたで。
【つづく】
「あの……こ、こちらさんはどなたで?」
瞬きすらせずにじーっとこっちを見詰める大きな目。アタシが視線を逸らせたのは恥ずかしいのと恐ろしいの、二つの思いからだった。
「この子? ホラ、アレよ。あそこの子。アレだってば」
お姉が近所のオバチャンみたいな話し方した。
「アレじゃ分からん。あそこじゃ分からんって」
すると少年本人がクルリとアタシの方に向き直った。こっちを凝視しながら、身体ごと向かってくるので怖いったらない。サラッサラの髪が優雅に揺れてる。
「じぃです」
「は? 爺?」
「じぃはねぇきみにあったことあるよ。ぱちんこいくときみかけた。でもきづいてなかったね」
こ、怖いねん!
爺は君(=アタシ)に会ったことがあるよ。パチンコに行く時に見かけたよ。でも(アタシは)気付いてなかった──そういうことか? そう言ってるのか? いや、だから怖いねん!
「はなさかじぃです」
「2─4の花阪さんよ。花阪Gさん」
はなさかじいさん……花咲爺さん? あぁ、今度はそのパターンできたか!
「ぱたーん?」
咎めるようにじーっと見られ、アタシは口ごもった。
「い、いや、こっちのことや」
コイツが噂のヒッキーの1人か。むぅ、こんな怖い奴やったとは……。
「れれれ霊道って?」ワンちゃんの震える声。
そうや、その話や! 突然の霊感少年登場に、アタシはちょっと浮き足立っていた。
「においがしたでしょう」
「は? 臭い?」
「つよいれいはねぇときにきょうれつなにおいをはなつんだよぅ……」
強い霊は時に強烈な臭いを放つものだと、Gは言う。長い年月同じ所に留まっている霊もまた然りと。
「そういや入った時、この部屋ヘンなの臭いしたな。窓開けたから消えたけど」
吸わない人間にとって、あれはキツイ臭いや。しかしうちのアパートには煙草を吸う人はいない筈。意外とみんな健康的やし。
「オキナ、アンタが吸ってんのちゃうん? 隣りの部屋やし、臭いがこもってもおかしくないわ」
「やめてよ。ボクは3ヶ月前に禁煙達成したんだから」
「ホンマか?」
「ホントだよ~」
怪しい。
「じゃあ、かぐやちゃんは?」
「ワシが煙草を? まさか! 戦場で特有の匂いを残しては命取りに……」
「せんじょう? ああ……分かった。吸ってへんねんな」
お姉でもうらしまでも、ワンちゃんでもカメさんでもない。ということは、この部屋で煙草吸ってたのは誰や?
「ゆゆゆ幽霊ですぅ!」
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