【HJMG!不毛さん77】
26.霊感少年G登場~不毛か呪いか、右足は骨折か?3【はじめましての方はこちらへどうぞ】
ワンちゃんの叫びに、アタシらはざわついた。いわくつきのこの部屋、やっぱり出るんや。
んん? 煙草吸ってるヤンキーの幽霊を想像して、アタシは一瞬混乱した。
「ちょっと待って。オカシイって! 煙草吸ってる幽霊が、アタシのパンツと桃太郎のズボン盗んで部屋に並べとくのか? その幽霊、一体何がしたいの?」
「………………」
誰も答えられなかった。
その時、アタシは目撃する。アタシらが凝視する中、窓が勝手にソロソロと開いたのだ。
これこそ心霊現象かと肝を冷やしたものの、窓の外からニョキッと伸びた腕にすぐ気付く。「よっ」とかけ声をあげながら、ランドセル背負った男の子が窓枠を越えて入ってきた。慣れた様子で靴を脱いで、ランドセルから体操服(使用済)を取り出す。更に、次から次へとランドセルの子供が部屋に入ってきた。
「くっせ~~~っっ」
「おれのがくっせ~~~っ」
汗ビショの体操服を振り回して遊びだした。
キャハハハと何だか無邪気に笑っている。
ようやくアタシらに気付いた様子。お互い硬直すること数分。
「ヒィー!」
「キェー!」
思い思いの悲鳴をあげて、子供らは散っていった。
「ま、待てやっ!」アタシも窓枠を越えて追いかけようとしたものの、足が引っかかって庭に落ちる。「み、右足がっ……!」
騒ぎで舞い上がったパンツが、ヒラヒラとアタシの上に落ちてきた。
結局パンツ泥棒は近所の悪ガキだと分かった。
アタシのパンツに興味があったわけではなく、近所のボロアパートでの肝試しの一環だったらしい。一人ずつアタシの部屋に忍び込んでパンツを一枚取って、それを1─3に並べて帰るという企画。剛の者は、更にその部屋で汗臭い体操服を振り回して遊んだということだ。それが最近、この近所の小学生のブームになってたらしい。
「訴えてやるわ! うちのアパートを何だと思ってるのよ!」
お姉はそう言って息巻いて出て行ったが、しばらくしてからグッタリした様子で帰ってきた。小学校に怒鳴り込み、校長に直談判。すぐに全校集会が開かれたらしい。校長が事件のあらましを全校生徒に説明し、そしてみんなが声を合わせて「大家さん、ごめんなさい。妹さんにもごめんなさい」と謝ったということだ。
「それ、晒し者にされただけやんか……!」
お姉、力なく頷く。
「ハゲの校長が講堂で、大きな声で事件の説明をするのよ。その間中わたしは一人、壇上にパイプ椅子置いて座らされて……。わたしと校長以外、生徒も先生もみんな笑ってるの。特にパンツの件。あれは拷問だわ」
さすがのお姉もこれはツラそうだ。ご主人のテンションに合わせてうらしまも落ち込み、それをカメさんが必死に慰めている。
「それよりリカ殿、足は大事ないか」
「いや、それが……」
桃太郎に言われるまでもない。アタシは右足甲の激痛に耐えていた。これは……イッたかもしれんな。折れてるかも?
騒ぎが収まってから気付いた。いつの間にか花阪Gの姿が消えている。部屋に戻ったのだろうと2─4扉をノックするも、返事はない。
まさかコイツが幽霊だったのか? そういうオチなのか? まことしやかに囁かれ始めた花阪G怪談説。しかし夜遅くに、パチンコの景品を抱えて、Gがのんびり戻ってきた。
「27.花阪G・妖精事件~不毛にツルっツル」につづく