27.花阪G・妖精事件~不毛にツルっツル1
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夜中になるとこのアパート、大騒ぎが頻発する。
「神が……神が降りているーッ!」
突然の絶叫はかぐやちゃんのものだ。オキナとうらしま、なぜかカメさんも加わってジャラジャラ麻雀大会の真っ最中らしい。今夜はかぐやちゃん、一人勝ちか?
「うるッさいねん!」
ぼやきながらも眠りに落ちた頃、今度は桃太郎に叩き起こされた。
「リ、リカ殿! 恐ろしや、恐ろしや!」
「何や? 今度はどんな騒動や」
目を擦りながら起き上がる。チラリと時計を見ると夜中の二時だ。階下での麻雀大会は未だ続行中らしい。桃太郎は青い顔でカクカク震えていた。
「そ、そこの屋根の上でイタチが暴れていたのじゃ。余は見た──イタチが大ネズミを獲っているところを! そしてペロリと食したのじゃ」
「ふーん……」ずいぶん生々しい現場を目撃してしまったようだ。でも寝てる人を起こすような話か?「で、その話のオチは?」
そう言うと桃太郎はプイッとふくれた。
「西の女子(おなご)はあさましい。すべての会話にオチを求めおる」
「そ、それは当たり前やん。オチもないのに喋ったらアカン」
特にこんな夜中に寝てる人を叩き起こすなんて最悪や。
再びアタシは眠りについた。絶対騒ぐな、朝まで寝かせろと桃太郎に念押ししてから。
麻雀のジャラジャラ音を子守唄に、徐々に深い眠りに落ちていく。その瞬間。身体がフワリと浮遊する感覚。ああ、気持ちいい。タオルケットの肌触りがまた何ともフンワリして……。
「ギャアァァアアアァァッッッ!」
だから何やねんッ?
「うるっさいわ! 今度は何やねん、桃太郎!」
久々に腹の底からキレて桃太郎を睨み付けるも、奴は隅の定位置でタオルケットにくるまってスヤスヤ寝息をたてている。奴の寝言というわけでもなさそうだ。じゃあ、今の悲鳴は?
「じじじ事件ですかぁ?」
壁の向こうからワンちゃんの叫び声。続いてドアを開け放つ音。悲鳴を聞きつけてワンちゃん、サンダル引っ掛けて廊下に飛び出したみたいだ。
「ギャアアアァァッッッ!」
再び、同じ声。これはただ事ではない。そう感じて、アタシも飛び起きた。玄関を出たところで、廊下の向こうでうずくまって「メガネ、メガネ」と探しているワンちゃんを発見する。
「はい、メガネ」
拾ってやると驚いたようにこっちを見た。
「すすすいません。メメガネがないと何も見えないので、メガネを探すこともできないんです」
たしか以前、桃太郎も同じようなことを言ってたな。
【つづく】
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