31.ひたすら忠犬のごとく~義兄の不毛な性癖2
そう思いながらもアタシは外に飛び出した。勢い込んで駆け出したものの「おおっと!」とすぐに立ち止まったのは、人の壁にぶち当たったからだ。
「何や、何や?」
アパート玄関先に全員集合している。桃太郎にワンちゃん、カメさんにオキナ、かぐやちゃんに花阪Gまで。ちょっと離れた所にお姉が高慢ちきそうに顔を傾けて上方を睨んでいた。その視線を追って、アタシはゲンナリ。溜め息をついたものだ。
「キェッ! キャーッ!」
屋根の上でうらしまが金槌振り回してる。胸と腰をヒモで縛られ、その先は近くの木に括り付けられていた。
「あのヒモ、ひょっとして命綱?」
高い所で衆人環視の下、縛られているものだから、うらしまのテンションは異様に高い。その様は、やはり義妹としてはかなり痛い。
「昨日の大雨で屋根が壊れたのよ。2─2から4号にかけて大規模な雨漏りよ」お姉が憤慨している。このアパート、満身創痍やな。建付けも悪いし、傾いてるし。その上、雨漏りもきたか。「何なの、あの局地的豪雨。うちのアパートだけみたい。ご近所には一滴も降ってないらしいじゃないの」
「うわぁ……」
その局地的豪雨の原因、アタシ知ってる。チラリと原因を見るとかぐやちゃん、桃太郎、オキナの雨乞いトリオは素知らぬ顔してうらしまにヤジを飛ばしていた。下らない企画は立てまくるのに、こういうところでのイニシアチブはとらないんやな。
「うらしま殿、そーっと動くのじゃ」
「クギが足りなめなんじゃない~?」
「ピンポイント爆撃に気をつけろ!」
そういや隕石騒動の時も、うらしまが修理を一手に引き受けていたな。こういうことが得意なんやろか、とはアタシも思わなかった。アタシの義兄はお姉に褒められたくて、ひたすら忠犬のごとくシッポを振っているにすぎないのだ。
「ガンバレ! うらしま」自分でも思いもよらなかった涙が、応援と共に零れた。
「ガンバレ、うらしま!」
「がががんばってくださいぃ」
「がんばれぇがんばれぇ…………」
ワンちゃんと花阪Gの頼りない応援も続く。
「うらしま、滑りやすいから気ぃつけや!」
「大丈夫だよ。ありがとう!」
屋根の上からうらしまが手を振った。アタシたちの間には、この時確かに兄妹の絆が通っていたのだ。ハラハラしながら義兄を見守る。
【つづく】
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