31.ひたすら忠犬のごとく~義兄の不毛な性癖3

【HJMG!不毛さん96】
31.ひたすら忠犬のごとく~義兄の不毛な性癖3
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「滑るなよ! 落ちる瞬間はフワッと浮遊して、手足の爪先までピンと気持ちよく真っすぐになるねん。それで絶妙なバランスを保ちつつ、キレイに両尻から地面に落ちていくねん。落ちた直後はショックと興奮で痛みはないけど、しばらくしたらジンジンくるんや。で、おふろに入った時、スリ傷に気付くねん。ジンワリ痛むんや。屋根から落ちるってのはそういう経験や。だからうらしま、気をつけろ!」

「実に説得力があるよのぅ」

 桃太郎が小さく呟いた。経験のある女子(おなご)は違うのぅと横目でアタシを見る。でもアンタもあの騒動の時、一緒に落ちたやん。あの時、アタシは必死になって宇宙人を探してたっけ。何であんな心境になってたんやろ。屋根に登ったって、ヤツらが見付かるわけでもないのにな。あれは我ながら悲しい記憶、痛ましい思い出や。

 ちょっと遠い目になって空を見た瞬間。

「あっふぅーーーーーーん」

 抜けたあえぎ声を放ってうらしまが足を滑らせた。アタシらの目の前に降ってくる。腰からストーンと着地した。

「あふっ……! あっふ……!」

 地面をのたうち、苦しんでいる。

「アラアラ」お姉が奴の元へ歩み寄った。「命綱、役に立たなかったわね」

「あふんっ……」

 お姉、ちょっと嬉しそうだ。うらしまもかなり幸せそうに見える。

「付いていけんわ……」

 アタシは目をそらせたのだった。第一、命綱が長すぎるねん。


 その夜のこと。

 みんなは1─1号──この狭い八畳板間で和気あいあいと食事をした。一見中良さそうに見えるけどコイツら、一家団欒って間柄とは違うで? よくよく考えたらディープな関係や。SとM、赤毛に変人、乙女に心霊少年、ヘンな子……濃い~面子(メンツ)揃ってにこやかに食事している。ホンマに変な光景やで。その誰もが寝たきりのうらしまのことは無視や。本日の功労者はコイツなのに。哀れなことに、お姉ですら知らん振りしてごはん食べてる。

「うらしま、これ食べや」

 アタシはお盆におかずを乗せて奴の元へ運んでやった。せめて義妹として、アタシだけでも優しく接してやらなきゃ。部屋の隅に布団敷いて横たわっていた身体を、うらしまはヨボヨボと動かして起き上がる。

「カメさんお手製の生姜焼きと野菜炒め、ご飯に味噌汁。ホラ、カンペキな夕食やで。食べ」

 するとうらしまは、その中からわざわざ梅干しをチョイスした。

「あふんっ!」

 酸っぱかったのだろう。口を尖らせている。でも悲しいかな、誰も見てない。

32.鉄ゲタ事件~不毛ヘンタイ兄妹参上!」につづく


     

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