オールド・ストーリーJ館は2階建てだ。
各階4部屋ずつあり、共用おフロとトイレットが1階に設置されている。2階にはちょうど玄関にあたる位置にちょっとした小部屋が作られてあり、そこはお姉の物置として使われているようだ。
各階4部屋ずつあり、共用おフロとトイレットが1階に設置されている。2階にはちょうど玄関にあたる位置にちょっとした小部屋が作られてあり、そこはお姉の物置として使われているようだ。
「そこも含め、共用部分を全て掃除しましょう」
カメさん、ピンクのフリフリ三角巾で頭を覆う。
「俺も全力を尽くしますが、リカさん、あなただけが頼りです」
カメさん、ピンクのフリフリ三角巾で頭を覆う。
「俺も全力を尽くしますが、リカさん、あなただけが頼りです」
こそっとアタシに耳打ちした。
上手いこと乗せられてしまったのだと気付いたのは、1時間程経ってからだった。
アタシはやる気ゼロ桃太郎と、空回りクイーン・ワンちゃんを指揮して2階廊下を磨いている。
カメさんは1階担当だ。時々、野太い声でのゴキゲンな鼻歌が聞こえてくる。
お姉は……いつの間にか姿を消していた。
こういう時に、何だかんだと上手く使えそうなうらしまはと言うと──。
アタシはやる気ゼロ桃太郎と、空回りクイーン・ワンちゃんを指揮して2階廊下を磨いている。
カメさんは1階担当だ。時々、野太い声でのゴキゲンな鼻歌が聞こえてくる。
お姉は……いつの間にか姿を消していた。
こういう時に、何だかんだと上手く使えそうなうらしまはと言うと──。
「開けて! 開けてぇ!」
玄関をドンドン叩く音がする。
「入れてぇ、 あふんっ! 奥まで入れてぇーッ!」
玄関をドンドン叩く音がする。
「入れてぇ、 あふんっ! 奥まで入れてぇーッ!」
「………………」
アタシは脱力した。どこまでヘンタイなんや、あの人。
「出て行ってくれ! 警察を呼ぶぞ!」
マフィアの本気怒声に、うらしまはめげる様子もない。
隙をみて家に入り込むと、雑巾を持っていそいそと手伝いだした。
カメさんが水を掛けて追い出す気配。
隙をみて家に入り込むと、雑巾を持っていそいそと手伝いだした。
カメさんが水を掛けて追い出す気配。
何とも異様な有様に、桃太郎とワンちゃんは素知らぬ顔してせっせと廊下を拭いていた。一切関わらないつもりだろう。うん、賢明な選択や。
「階下のことはどうでも良いわ。それよりリカ殿」
桃太郎が珍しく冷たい顔して言い捨てた。
メガネが向けられた先は階段奥の物置部屋だ。ワンちゃんが「ひぃっ!」と悲鳴をあげる。
メガネが向けられた先は階段奥の物置部屋だ。ワンちゃんが「ひぃっ!」と悲鳴をあげる。
「あそこも余たちが掃除をするのか……?」
「いや、まさか……。カメさんが来てくれるやろ。アタシらの手には負えん」
魔の巣窟に、アタシたちは恐れおののいていたのだ。
いつまでも同じ所をゴシゴシ擦っているのは、その瞬間を先延ばしにしたいからに他ならない。
いつまでも同じ所をゴシゴシ擦っているのは、その瞬間を先延ばしにしたいからに他ならない。
「嫌や。恐ろしい。何が潜んでるか分からん。何せお姉の物置や」
2人を振り返る。逃げよう、と言いかけたその時だ。
ギシッ。ギシッ……。
階段をゆっくり登って来る、凍り付くような足音が。
柱の向こうからゆっくりとその姿が現れる。髪の長い、細い女──オバケ違(ちゃ)う。お姉だ。姉の乙姫や。
しかしお姉は、幽霊のような壮絶な笑みをこちらに向けた。
階段をゆっくり登って来る、凍り付くような足音が。
柱の向こうからゆっくりとその姿が現れる。髪の長い、細い女──オバケ違(ちゃ)う。お姉だ。姉の乙姫や。
しかしお姉は、幽霊のような壮絶な笑みをこちらに向けた。
「掃除、終わったぁ?」
掃除アレルギーの彼女は、携帯ゲーム機片手に青い顔だ。
「早く終わらせて、おやつにしましょうよ」
「おやつはいいけど。アンタ、何も働いてへんやん!」
「アラアラ…………何か言った?」
睨まれてアタシは怯む。ああ、自分で自分が情けないわ。
ギギーッ。
魔窟の扉は、こうして魔の女王自らの手で開かれたのだった。
【つづく】
「あああの、そこの物置がまだですぅ」
ワンちゃんが真面目に申告した。
「そう、じゃあさっさと終わらせちゃいましょう」
「あっ、お姉……」
姉の行動には躊躇がない。
魔窟の扉は、こうして魔の女王自らの手で開かれたのだった。
【つづく】
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