【HJMG!不毛さん61】
20.不毛すぎる、アタシの一日~迫る危機感2【はじめましての方はこちらへどうぞ】
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時々アタシと桃太郎は揉める。
アタシが信号無視すると奴は怒るのだ。
「そちは屑人間か。社会の規範を守れい!」
「うるさいわ! アタシかて周りは見てるで。でも車通ってへんやん。そんな時は渡って当然やろ! 関西人はみんなそうしてんで!」
「おのれ、御奉行様の前に引っ立ててやるぞ!」
「お、御奉行様って警察のこと? も、もうイヤや。警察はカンベンして!」
ダラダラと言い合いを続け、疲れてきたら近くの川原に向かう。
散歩中の犬の相手をし「本物のワンちゃん」と名付けたりする。
それからアパートに帰ると、うらしまが風呂場の屋根から声をかけてきた。
「おかえり。リカちゃん、桃太郎くん」
「ただいまぁ。修理か? ご苦労さん」
そう、宇宙からのオレンジの光は隕石だったのだ。
直径5ミリ弱の小さな物だったが、アパート風呂場の屋根は大破した。
これだけの被害で済んだのは、むしろ奇跡的だったという。
新聞にも小さく載ったし、近所の噂もものすごい。
見物人が押し寄せる始末。
アタシ的には感電少女の家だとバレないか冷や冷やものだ。
だって何だか恥ずかしい。
壊れた屋根は業者に頼むこともせず、うらしまが毎日コツコツ修理させられている。
奴はご主人様(お姉)の役に立てると心底喜んでいるらしいから、アタシは何も口出ししてないけど……何か不憫な男やで?
お姉と言えば、かぐやちゃんとのデートにさすがに懲りたらしい。
「あの方とのデートは、また別の機会に敢行するわ」と力なく言っていた。
かぐやちゃん騒動が一段落し、アタシは久々に自室で穏やかな時間を過ごしていた。
「はぁ、せっかくトーキョー来たんやし、国技館で相撲見たいわ。そろそろ五月場所が始まるやん。アタシ、大阪では毎年行ってて、けっこう詳しいねん。なぁ桃太郎、聞いてる?」
後ろを向いたら桃太郎、鏡を前にブラシで頭──特に頭頂らへんをペチペチ叩いている。
頭皮を刺激しているようだ。
真剣な表情で、アタシの話なんて聞いちゃいない。
「ももた……?」
見ちゃいけないものを見てしまったようで、声をかけるタイミングを失ってしまった。
──コイツ、一体何歳なんやろ?
──ほんま、謎多き桃太郎やわ!
……このナゾはアレやな。解明するかせんか言うたら、どっちでもいい系やな。
……ほんま、もぅどうでもいいし何もかもどうでも……ふぁぁ、眠い……。
「ってアタシ、何やってんの! こんなんしてたらアカン!」
ようやく気付いた。
アタシ、駄目な暮らししてる。
どんどん駄目な人間になっていく!
アカン!
アカンやん!
「21.さんすうのべんきょうからはじめよう!
~アタシの脳ミソ→不毛?」につづく
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