不毛な主義~決してパンツをはかない主義の男2

HJMG!不毛さん51
17.不毛な主義~決してパンツをはかない主義の男2
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「かぐやちゃん、こめかみに隕石が当たったって言って寝込んでるんだよ!」

 オキナは「カーッ!」と叫び声をあげる。

「いや、オカシイって。人間のこめかみに隕石当たったら、その人死ぬで? かぐやちゃんは寝込んでるわけじゃなくて、単に寝てるだけやろ? 昼過ぎに目覚めて、夜明けまで起きてるタイプの人ってだけやろ?」

 まぁアタシも人のことは言えんけど。
 オキナだってそれっぽいし、うちのお姉もそっちの部類や。
 だいたいこのアパート、そのテの人多すぎんねん。

 お姉とオキナが激しい睨み合いをしている中、アタシは遠慮がちに背中を突つかれる感触に気付いた。ワンちゃんだ。

「リリリリカさん、アレ……アアアアレ……」

 震える指先が指す方向は例の竹の小屋。
 入口の扉(葉っぱのカーテン?)が揺れている。
 ガシャンガシャンと音がする。
 KILLTシャツと赤短パンの絶世の美青年が、寝ぼけ眼をこすりながら竹やぶに姿を現したのだ。

「ウゥムムム……???」

 ワンちゃんが複雑な表情で唸り声をあげる。
 分かるで、その気持ち。
 見とれていいのか、呆れたものか、慄いた方がいいのか、一瞬判断がつかへんねん。

 最初から判断能力を奪われているらしい二人は、各々「アッ!」と叫んでモジモジし始めた。
 姉とオキナも、かぐやちゃんの登場に気付いたのだ。

 KILLTシャツの美青年は小屋の周囲のブービートラップの点検を始めた。
 アタシらに気付いてない筈ないが、完全に自分の世界や。
 ものすごく珍しい動物を動物園に見に来たような錯覚に陥る。

 そんなアタシのすぐ横──火花を散らしているお姉とオキナ。
 爪で相手の手の甲を引っかいたり、足を踏んづけたり。
 恐ろしく低レベルで陰湿な嫌がらせ合戦を繰り広げている。

 そんな中、遂にお姉がキレた。

「髪にガムなんて付けんなやァッ! 程度わきまえやッ!」

 ドスのきいた声で怒鳴り、オキナの鼻を拳(グー)で殴る。
 「ガーッ!」と吠えて、オキナのズボンのベルトを抜き放った。
 あ、鮮やかな脱がしのテクニック……!

「キャッ?」
 叫んでオキナ、前を押さえて前屈みになる。
 その裾をガシッとつかみ、お姉はオキナのズボンを力任せに引っ張った。
「やめてー! やめてぇー!」

 オキナの悲鳴が響き渡る。

 ──んん?

 異常事態に気付いたのはその時だった。
 徐々にズレていくズボン。
 白い尻が露になり、割れ目が見えてくる。

「えぇぇ?」
 次の瞬間、アタシは声を大にして叫んだ。
「こ、この人、ノーパンや!」

 たすけてー、と近くの竹にしがみ付き、オキナは涙を流している。

「そ、そういう主義なんだよッ! パンツをはかない主義で何が……何が悪いのさッ!」

 丸出しの尻をプルプル震わせて、オキナは主義を連発した。
 男のズボンを剥ぎ取りながら、髪振り乱してお姉は高笑い。

「恥をかけ! かぐや様の前で恥をかけッ!」

 ケタケタ笑っている。

「……なんて光景や」

 アンタも十分、恥やで?

 竹やぶの向こうからかぐやちゃん、ポカンとした顔でこっち見てる。


「18.不毛な主義、崩壊~ヘンなアンケート」につづく


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