不毛すぎたカラクリ~間に合わなかったバルサン1

【HJMG!不毛さん41】
14.不毛すぎたカラクリ~間に合わなかったバルサン1
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「ハァ、キレイになると気持ちいいわー」

 吹きつけたアルコールを布で拭い取る。清潔ないい匂い。

 家賃を払わないならせめて働けとお姉に命じられて、トイレット、おフロを含む共用部分の掃除(毎日)がアタシの日課になった。
 仕方ない。お姉の言う通りや。
 カメさんも手伝ってくれるし、もうあんな騒動はゴメンやしな。

 ゴキブリ騒動の後、カメさんは姉に掃除の仕方を指導してから帰っていった。
 アカン。カメさん、まだお姉に夢見てるみたいや。
 あの人は懲りない人やで。
 掃除なんて一生するつもりないで?

 モップを洗って、バケツを日光の下に干して……すっかり満足してアタシは部屋に戻った。
 ごく普通の動作で扉を開ける。

「アァ……」
 軽く溜め息でた。
 一気に現実が押し寄せてきたのだ。

 部屋の中では桃太郎が泡吹いて失神していた。

「桃太郎、何があったん? しっかりし……ヒッ!」

 そこで行われている事態にようやく気付く。

「さ、寒い。寒いでゴザル」

 桃太郎の影から、やけにシブい声が聞こえてきたのだ。
 前回の騒動で家(玉手箱)を奪われた一寸法師だ。
 彼は体が小さいのでアタシらとは体感温度が違うらしい。
 プルプル震えながら桃太郎のマゲの中に潜り込もうとしていた。

 桃太郎はコイツの姿を見た途端、例によって倒れたようだ。
 時折低い声で「ウーッ」と呻いている。イビキか?

「アッ、アカン!」

 咄嗟にアタシが大声をあげたのは、法師の手元にキラリと光る白い刃を認めたからだ。
 続いて、縄を裁つようなザクッという音。

「アア……」

 止める間もない。
 一瞬にして桃太郎のマゲはザックリ落とされ、一寸法師はそれを抱えてコソコソと押入れの中に帰っていった。

「ア、アタシもあんな感じで髪の毛持っていかれたんや……」


 そう思うと何ともやりきれない思いが。
 マゲをスッパリ落とされた桃太郎は、何だか引退した細力士みたいだ。
 法師の住む押入れをまじまじと見詰める。
 エライもん住んでたなぁ、ここ。
 福の神とか言ってるけど、ホンマはただの迷惑な小人なだけやで、アイツ。

「引っ越したいかも……」

 桃太郎も一寸法師も何もかも放って、とにかくここから逃げ出したい気持ちになるのは、アタシ的には仕方ないことやん。
 ボーッとしたまま荷物まとめかけていたアタシの部屋のドアがバターンと開いたのは、それからしばらくしてからのことだった。

「あら、リカ。何やってるの?」
 余裕たっぷりの上から目線。姉だ。
「今日のお掃除は終わって?」

「ハイ、お姉。おフロもトイレットも終わりました」

 アタシ、まるでシンデレラやん。

             【つづく

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