不毛すぎたカラクリ~間に合わなかったバルサン3

【HJMG!不毛さん43】
14.不毛すぎたカラクリ~間に合わなかったバルサン3
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「お金に振り回されてはいけないけど、人間が生きていく為にはお金はとても重要なものよ」

 なんてお姉は勝手なことを言っている。
 桃太郎は桃太郎でいちいち「ハハァーーーッ」と土下座して聞いてるし。
 傍で見ててウザイことこの上ナシやわ。

 そうこうする間にアタシら3人は1ー4号室前にやって来た。

「あなた、存在がややこしいから帰っていいわ」

 お姉にあしらわれ、桃太郎はショックを受けている。
 フン。ざまあみろ、や。


「で、1─4号室? ここの住人ってどんな人?」

「ヤな奴よ。変態だし」

 お姉、吐き捨てる。
 突き放すような言い方だ。この人が他人をこんな風に言うのは珍しい。

 変態だらけやん、このアパート……。

 そう思いながら1─4のドアをノックすると、横からお姉が扉を豪快に蹴り開けた。中から悲鳴が響く。

「キャア! いきなり何だよッ。プライバシーの侵害だよ。訴えてやるからっ! それに、こないだのアレは何なの。ゴキ大量発生! 雨漏りするし、地震でもないのに家は揺れるし。こんな家もぅイヤだ! 引っ越してやるぅ」

 中の人物の性別すら判断できない金切り声だ。

「じゃあ、出ておいき!」

 お姉が勇ましく返す。
 違(ちゃ)うやろ、追い出してどうすんねん。家賃払ってもらうんやろ。

「お姉は黙ってて。あの、お忙しいところスイマセン。先月のお家賃をですね……アッ!」

 8畳の狭さの部屋にいたのは、赤い髪の若い男だった。
 見覚えのあるその姿。
 道でこかされた、コインランドリーで会った、そしてスーパーでケンカした例の失礼な若者だ。

「アッ」
 向こうもアタシに気付いて指差す。
「メガネ桃太郎のお供?」

「お供違(ちゃ)うわ!」

「ああ、メガネ桃太郎の相方だっけ」

「相方でもないわ!」

 じゃあ、何だよ?
 訝しげに尋ねる赤毛を、アタシは睨み付ける。

「じ、事務方や」

 ……適当に答えてしまった。

「フーン」
 何だか納得した様子だ。

「あ、あの、違うねん。ホンマは……」

 言いかけた台詞を、空気を読まないお姉が堂々と遮る。

「この男が悪いのよ。この間のゴキブリ騒動の原因よ」

「なんで……?」

「バルサン買って来いって言ったのに、コイツがトロいせいで」

 赤毛は気楽な様子でポンと手を叩いた。

「あ、そうそう。大家さん。買ってきたよ、バルサン。これでいいの?」

 部屋の隅に置いていたスーパーの袋を持ってくる。

「もう遅いわ!」

          【つづく

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