不毛すぎたカラクリ~間に合わなかったバルサン4

【HJMG!不毛さん44】
14.不毛すぎたカラクリ~間に合わなかったバルサン4
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 言いながらお姉、袋を奪い取る。
 中には大量のバルサンが。

「大家さん? あの、お金……?」

「……ちっ」
 お姉が舌打ちした。

「こ、この人、パシらせたうえに金払う気もないの?」

 信じられな~い、と若者は呻いている。

 ……読めてきた。
 姉はコイツにバルサン購入を命令してたんや。
 だからこの間、スーパーでバルサン大量買いしてたんだ。
 コイツもコイツやけど、それはお姉が悪いで。
 何でも人にさせようという態度がアカン。

「お姉、この人の名前は? まさかここの住人やったとはな」

「あぁ……」
 さも鬱陶しそうにお姉、鼻の頭に皺を寄せる。
「名前ねぇ。うんこ、だったかしら」

 うんこうんこと吐き捨てる姉に、赤毛が声を張り上げる。

「うんこなワケないじゃん! アンタ、人の名前何だと思ってるのさ!」

 まったく同感や。
 そう思ったものの、アタシは2人の間に割って入った。

「まぁまぁ、それは置いといて。今日のところはアレですねん。1か月分の家賃を頂戴しに参ったわけで。ヘッヘッヘッ」

 できるだけ腰を低く、手を出した。

「キ、キミも何だかいやらしいよね? ボクはうんこじゃないよ。奥菜(オキナ)

「オキナか。アタシはリカや。年は?」

 尋ねるとジロリと睨まれる。

「30になったばかりだけど、それが何か?」

「スゴイ若作りやな、自分。若者違(ちゃ)うやん!」

「ま、まだ若者だよ。何、この失礼な子? それに何のこと? ボク、家賃滞納してない筈だけど?」

「は?」

 お姉を見ると軽く肩を竦めてそっぽを向いた。

「確かに家賃は遅れてないけど。いい機会だからこの男、追い出そうと思って」

「な、何言ってんの!」

 姉を問い詰めようとしたところに桃太郎が入ってきた。
 モジモジしながらアタシとお姉を見比べる。

「メ、メガネ桃太郎っ!」

 オキナが顔を輝かせた。

「メガネ桃太郎……? それは余のことか? そちは何者じゃ。名を名乗れい!」

「うわ、何ソレ? 何のネタ? ねぇ、テレビ出たりしてるの?」

「テレビとは喋る鉄の箱のことであるか?」

「いいッ! 日常生活からネタ作り? ね、一緒に写メとってよ」

「そ、それは何じゃ!」

「携帯だってば。それもネタ?」

「おのれっ、小さな化け物めッ!」

 ……アカン。ややこしくてしょうがない。


「15.不毛闘争2~あらためて桃太郎追い出し作戦・変なキレ方」につづく

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