不毛闘争2~あらためて桃太郎追い出し作戦・変なキレ方2

【HJMG!不毛さん46】
15.不毛闘争2~あらためて桃太郎追い出し作戦・変なキレ方2
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 アカン。
 付き合ってるわけでもないのに別れ話切り出してるようなこの間の悪さ。
 だからアタシは悪くないって。
 むしろ被害者や。

 桃太郎は何の面識もないアタシの部屋に勝手に住み着いた変質者や。
 殿様気分で家事は何もしないし、文句言ったら世直しの旅という目的が……とかワケの分からんこと言うだけやし。
 このカレーの材料だって、桃太郎は1円だって出してない。
 アタシが、恐ろしいお姉に借金して買ったものだ。

「世直しとか言う前にアンタ、働きぃや!」

 怒鳴ると桃太郎は一瞬、怯んだ。

「よ、余は桃から生まれたので戸籍が……」

「桃ネタは聞き飽きたわ!」

「ネタではない。ネタではないのじゃ」

「うるさいわッ!」

 アタシは右手を振り上げた。
 次の瞬間、桃太郎の頬がパァンと激しい音を立てる。

「アアッ…!」
 叫んで桃太郎は床に倒れた。


 つ、つい手が出てしまった。

 桃太郎が悲壮な鳴き声と共にこちらを見上げるが、メガネが曇っていて奴の目はよく見えん。
 アタシの怒りはまだまだ収まらんかった。

「せめてアンタ働けや! でも今更お笑い芸人目指そうったってアカンで。アンタ、一発ギャグすぎるもん。その格好(ナリ)と、ももたろさんの歌だけやん」

「リ、リカ殿? 何を専門的な……?」

「お腰につけたきびだんごの所を、きりたんぽとか、めんたいことか、ぶなしめじとか……色々地域ごとの特産物に応用できるから営業しやすいってか? アカンわ、それだけやもん! あとは桃から生まれたから戸籍がないってネタだけやん!」

「リカ殿、ネタではない。だから断じてネタではないのじゃ……」

「お笑いの世界はそんな甘くない! そんなんじゃ生き残れへん! いや、それ以前に芽も出んわァッ!」

 大声で言い放った。
 桃太郎は頬を押さえたまま「ハアッ」と息を呑み、傷付いた顔を作って見せた。
 チクリと痛みかける胸を奮い立たせる。
 桃太郎も一寸法師もゴメンや!
 あんなん、ただの変人と、ただの変な小人やん。

「チクショーッ!」

 一声吠えて、アタシは部屋を飛び出した。
 何でアタシが出て行かんとアカンの?
 そんな疑問が掠めたが、今更そのノリを破壊することはできない。

「チクショーッ!」

 階段を駆け下りたところで、できれば会いたくない面倒臭い奴に鉢合わせした。

「コウモン科から今帰ってきたよ」

 うらしまだ。
 馴れ馴れしく話しかけてくる。
 うるさいわ、空気読め!

 いそいそとお尻専門科に行ったものの、結局内科に回されたらしい。
 幸いどこにも異常はなく、硬い大便をした為にシリの端がちょっと切れただけだろうという結論だ。
 大便が硬い原因として水分不足が考えられます。水分をたくさん摂りましょう。
 そう指導されて、早速2リットルペットボトルを抱えてる。
 アタシの目の前でそれをグビグビ飲んでみせた。

「アンタ、ウザイねんーッ! チクショーッ!」

 叫んでアタシ、再び駆け出した。
 うらしまが背後で何か言ってる。
 ゴボゴボ言いながら喋るから何言ってるか、全然分からへんわ!



「16.超絶不毛美青年登場!~でも頭がすごく残念なかんじ」につづく


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