不毛闘争2~あらためて桃太郎追い出し作戦・変なキレ方1

【HJMG!不毛さん45】15.不毛闘争2~あらためて桃太郎追い出し作戦・変なキレ方1
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 血便の件でお姉に病院に行くよう命じられたらしい。
 さすがのうらしまも沈んだ顔だ。

「そりゃ、ちゃんと見てもらわんとアカンて。心配やもん」

「うーん……病院はキライだ……」

「そんなん言ってる場合違(ちゃ)うで。ああ、商店街のヤブん所行ったらアカンで。あそこ、ロクな評判聞かんからな。ちゃんと駅前の総合病院行きや。待ち時間長いけどしょうがないって。血便やったら内科かな。泌尿器科か?よう分からんな。肛門科」

「……こ、肛門科?」

 うらしま、突然明るい表情になった。
 しまった、ソコか!
 肛門科でスイッチ入ったか!

 何を想像したのか、ウキウキした様子で内股で走り去るうらしまを見送って、ア
タシは自分の部屋に帰って行った。

「疲れるわ、あの人……」

 言ってたところに今度はオキナがやって来る。

「キミさぁ、感電少女なんだって~?」

 特異なものでも見るような感じでそう言われた。
 何や、その目つき。傷付くわ。
 どうせ、うらしまあたりが得意になって喋ったに違いない。

「アタシ、感電少女って陰口叩かれてたんか……」

 それはそれで傷付くわ。


 一日中、アタシは悶々と考え込んでいた。

「でも事実やもん。しょうがないし」

 振り切るように、アタシはスパイスの小瓶を振った。
 夕飯の激辛カレーの完成や。
 カレーとスープとサラダ。我ながら会心の出来や。

「桃太郎、晩御飯できたでー」

 すると桃メガネ、テーブルの前に座ったまま顔だけこっち向けた。

「ご苦労であった」

 そのセリフに、アタシはキレた。

「何やと、オラー!」
 桃スーツに箸を投げ付ける。
「すいません、リカさん、アリガトウゴザイマス。ご馳走になります、やろが! 何でアンタはいちいち上から目線なんや! もっとアタシに感謝しろ!」

 怒鳴ると桃ワラジは怯えたように身を縮めた。
 急いで箸を拾っている。

「で、では感謝の意を込めて今度の日曜、母の日に肩たたき券を50枚進呈……」

 いらんわ!

「アタシは肩凝ってへん! 第一、アンタの母親違(ちゃ)う!」

 甘えんな、と怒鳴ると桃太郎の奴、小さい声でブツブツ言ってる。

「お、大家殿に言いつけてやる。怒られるがよいわ」

 アタシは黙って座ってカレーを口に運んだ。
 かなり辛い。調子に乗ってスパイスを入れすぎたみたいだ。

「あのなぁ、桃太郎……」

 香辛料で噎せ返っている桃太郎に水の入ったコップを渡して、アタシは遂に切り出した。

「今更言うのも何やけど、やっぱり出て行って欲しいねん……って、アタシ悪者違うし! 普通の感覚やん。出て行ってって言って何が悪いん? あらためて言うのもアレやけど、勝手に人ん家()居座るアンタが悪いねんで。だ、だからそんな顔せんといてったら」

 今まで普通の家族みたいにコイツに接してきたアタシが人が良すぎた。
 いや、どうかしてたんや。
 おかしな流れでそのままになってたけど、素性の知れん男と二人きりで暮らすなんて、有り得へん話や。
 別にオキナに妙なこと言われたから気にしたってわけじゃない。
 でも、アタシと桃太郎が相方(事務方でも一緒や)で、しかも一緒に暮らしてるなんて思われたらアタシ、やっていけへん。
 16六歳の乙女にとってはショックな誤解やわ。

「べ、別に赤毛を気にしてのこと違うで? ただ……」

「ただ……何じゃ?」

 じっとりした上目遣いの視線で桃太郎がアタシを見上げる。

「いや、あの、だから……別にアンタが悪いわけ違うねん。ただ、アタシが……。アタシのワガママっちゅうか……」

           【つづく

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